第六話 七
朝食を終え、自室に戻った俺は、紫雲さんに電話。
『もしも~し。空木君、どうかした?』
「あ、あのさ。紫雲さん。俺、霊魔の幻覚を見続けているみたいなんだ」
『分かった。今から、風吹さんと一緒に行くね』
「うん。お待ちしてます」
紫雲さんは、すぐに理解してくれたようで、風吹と一緒に、来てくれるらしい。
俺は一階に戻り、姉ちゃんに伝える。
「姉ちゃん。これから紫雲さんと風吹が来てくれることになった」
「やっぱり、何かあったね?」
「幻覚を見続けてる。霊魔の幻覚を、二回も。紫雲さんに、連絡した」
「望さんは、少し出掛けてくるけど、何かあったら、電話するんだぞ」
そう言い残し、出掛けていった姉ちゃん。紫雲さんが来るまで、テレビでも観ていよう。
日曜日のこの時間は、あまり面白い番組がない。バラエティー番組まで、もう少し時間があるし、とにかく暇だ。
「ごめんください」
玄関から、紫雲さんの声。急いで玄関に向かう。
「おはよう、紫雲さん」
「おはよう。体調は大丈夫?」
『見たところ、元気そうだな』
「風吹も、来てくれてありがとう」
リビングに案内して、麦茶を三人分用意して。お茶菓子は、前に買ってたせんべい。
「それで、幻覚はどんな感じ? 内容を教えて」
「今日は、六月最初の日曜日でしょ。お昼に竜也とラーメンを食べる約束をしてるんだ。幻覚は、竜也とラーメンを食べて、ゲーセンに行くと、霊魔が現れる。もう一つも、ラーメンの後にカラオケに行くと、霊魔が現れてた」
『ほぼ同じ内容の、繰り返しか。何か、負の感情に触れたことは、ないか?』
負の感情? そんなものに、触れたことは、ないはずだけど。とにかく、負の感情に触れたとこはないと、言い切りたい。
「ない。ないはず」
「斉木君との約束は、前から決まってたの?」
「連絡が来たのは、金曜日の夜」
「ただ、ラーメンを食べるだけ?」
「購買の七海さんが結婚したでしょ。竜也、七海さんが好きだったから、失恋を慰めるためにね」
紫雲さんは、俺が言ったことに、何かピンときたらしく、黙ってしまった。もしかして、竜也が原因?
「斉木君の失恋。多分、失恋が原因かもしれない。斉木君の失恋が、霊魔を生み出してる。斉木君が幻覚に現れて、繰り返しているなら、可能性は高いよ」
『愛は時として呪となる。愛ほど、強い呪いはない』
《愛》か。確かに、竜也は七海さんに、恋心を抱いていたけど。でも、それが霊魔を生むなんて、あり得るのだろうか。
「どうしようか。風吹さん」
『祓うしかないだろうな。行き場のない負の感情が、呪いとなって、少年を蝕む前に』
「呪いが、俺を蝕むの? マジで? なんとかなるんでしょ?」
『少年。覚悟を決めて欲しい。意識の中で、少年自身が霊魔となる呪いを、祓うことになる』
「私たちは手出し出来ないから、空木君が一人で、呪いを退治するの。私たちは、見守るだけ」
俺一人で、意識の中の呪いを、退治。霊魔の前身なら、まだ簡単なんだろう。いや、そうであって欲しい。




