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紫雲のカグラ  作者: 天城なぎさ
第六話 幻覚からの脱出
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第六話 四

 昨日は、七海さんの結婚式が、執り行われた土曜日。幻覚のせいで、曜日感覚が狂っているけど、日めくりカレンダーと、スマホを駆使すれば、何てことない。

 お昼は、竜也と約束していた、ラーメン屋。


「泣くなって。ほら、チャーシュー食っていいからさ」

「お前は、失恋したことないだろ!? 片思いの失恋が、どんなに辛いか、知らないだろ!」

「世知辛い世の中だな」

「七海さんがいたから、俺のスクールライフは、楽しいものだったんだ!」

「すみませーん。ウーロン茶おかわり」

「七海さんは、バレンタインにクッキーくれたんだ! この俺に!」

「あと、ミニチャーハンも追加で」


 チャーシュー麺と、ウーロン茶を頼んだ俺。あれ? 幻覚と一緒だ。幻覚でも、チャーシュー麺とウーロン茶を頼んで、ミニチャーハンを追加している。

 幻覚って言いながら、本当は予知夢だったのでは?


「何が悪くて、七海さんは結婚してしまったんだよ」

「七海さんって、いくつだっけ?」

「八月で二十七歳」

「ちょうど適齢期ってやつじゃん」

「そうだとしてもさ、あと一年くらい、待ってて欲しかった」

「お、このチャーハン旨い!」


 やっぱり、予知夢じゃん。そうとしか思えない。なんとか誤魔化しているけれど、恐怖心が芽生えてくる。

 竜也は予知夢と変わらず、泣いてるだけで、味噌ラーメンを食べていない。


「早く食わないと、麺が伸びるぞ。食って発散すれば?」

「そうだな。今日は思う存分、食ってやる!」


 竜也は涙を拭い、割り箸を割って、勢いよく麺をすする。予知夢でも現実でも、吸引力の変わらない、ただ一つの竜也。


「結婚したとしても、七海さんは辞めないんだろ? それなら、毎日会えるじゃん」

「既婚者の七海さんに、会える自信なんてねえよ」

「昼休みにパン買ったり、お菓子買ったり出来るだろ」

「明日から、朔が代わりに行ってくれないか?」

「パシるつもりか?」

「そのつもりはない。あ、でも、朔は屋上に行ってるか」

「俺の貴重な昼休みは、誰にも譲れない」

「紫雲さんと、デキてるんじゃないかって、噂があるぞ」

「デキてる? 俺と紫雲さんが? ないない。普通に友達だけど」


 現実でもその話か。まったく、嫌になる話だってのに。一緒にいるだけで付き合ってることになる、ティーンズの考えは分からないものだ。それと、余計なお世話だっての!


「何で一緒にいるだけで、付き合ってる方向になるのかね。ティーンズの考えが分からないわ」

「お前もティーンズだろうが」

「竜也の奢りだったよな。すみませーん。餃子ひとつ!」

「おま、ちょっと待て。食い過ぎ!」

「ラーメン屋で奢るから、話を聞いて欲しい。そう言ったの、竜也だよな?」

「あーあ。言わなきゃ良かった」

「ゴチになります! 竜也氏!」

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