第六話 三
霊魔を一人で倒せた俺は、云わば無敵かもしれない!
いや~。ついこの前、ズタボロにされていた俺が、一人で倒せたんだ! これ以上の喜びなんて、今までもこれからも、ないだろう!
う……君! うつ……君!
「空木君!」
誰かの声で、目を覚ますと、灯りのついた街灯の下で、俺は倒れている。あれ? 俺は何をしてたんだ?
「紫雲さん? 俺は何を?」
「ここで霊魔と対峙したの。だけど、霊魔の幻覚を見たせいで、倒れたんだよ。覚えてない?」
「全く何も覚えてない」
「そっか。今日はゆっくり休んで。練習は、ほどほどにね」
霊魔の幻覚か。何処からが幻覚だったんだ? 竜也が失恋したから、慰めるために、ラーメン食べに行って。ゲーセンでDDRをして、気配を感じたから、外に出て霊魔を倒した。
何が幻覚で、何が現実なんだろう。誰か教えて欲しい。
***
「ただいま~」
「おっ帰り! 朔、今日は鶏肉が安かったから、唐揚げ祭りだ!」
「マジで! やった!」
姉ちゃんの声が、キッチンから聞こえてきた。家に帰れば、いつも通り。それに今日は唐揚げが待っている! 大好物が大量にあるなんて、幸せだ!
さてと、今日は日曜日。大喜利でも見ますか! ちょうど五時半だし、間に合った!
「姉ちゃん、大喜利始まるよ~」
「ん? 何言ってんの?」
「何って、五時半だから、大喜利」
「今日は土曜日でしょ? この時間はアニメじゃん」
コマーシャルが終わると、テレビから流れたのは、今放送中のアニメのオープニング曲。
あれ? ホントだ。スマホを見てみると、土曜日を示している。スマホのカレンダーを確認すると、竜也とラーメンを食べに行くのは、明日のこと。
「何か混乱する……」
「朔~。唐揚げ揚がったよ~」
「ちょっと待って。混乱してて、ヤバい」
「大丈夫かい?」
「霊魔の影響だから、大丈夫なはず」
今は今なのか、明日が今日なのか。今日が土曜日なら、七海さんの結婚式は、今日、執り行われている。その事で、竜也の話を聞くために、明日はラーメンを食べに行く。
「あー、意味分からん」
「重症じゃないか。仕方ない。望さんが、唐揚げを食べてあげよう」
「それはダメ。混乱してても、唐揚げだけはダメ」
食べれば混乱は治まるだろう。いや、治まって欲しい。
「七海先輩が結婚するって、朔は知ってたかい?」
「知ってる。今日が式らしいじゃん」
「購買と学校司書の二つを、やってるんでしょ? 七海先輩凄いよね」
「姉ちゃんと七海さんは、先輩後輩の関係?」
「そうそう。吹奏楽部で一緒だったのだよ」
新事実が、急に発覚してしまった。七海さんと姉ちゃんに、そんな関係があったとは。
「七海先輩、市の吹奏楽団に入ってるらしいから、今度聴きに行こっか」
「俺も行くの? いつ?」
「来月の第一土曜日。夕方にあるらしいから、チケット取らなきゃ」
「俺はいいや。晴斗さんと行けば?」
「晴斗君を誘うけど、香楽ちゃんも誘う予定だいるのだよ」
「紫雲さんまで誘ったら、霊魔が出現したらどうするんだよ。風吹に任せるつもりか?」
そう言うと、姉ちゃんは目を潤ませ、泣きそうな表情を向けてきた。
「普段、遊ぶことないじゃないか。望さんは、たまには遊びたいのに。うぅ。朔がそう言うなら、一人で行くもん!」
ただでさえ混乱してるのに、姉ちゃんの相手をしなければいけない、この状況。ホント、誰か助けて。




