第六話 一
ジューンブライドって言葉は、日本でもよく使われる言葉なわけで。六月最初の土曜日、購買の七海さんが、結婚式を挙げた。
翌日の日曜日に、俺は親友の竜也に誘われ、ラーメンを食べている。
「泣くなって。ほら、チャーシュー食っていいからさ」
「お前は、失恋したことないだろ!? 片思いの失恋が、どんなに辛いか、知らないだろ!」
「世知辛い世の中だな」
「七海さんがいたから、俺のスクールライフは、楽しいものだったんだ!」
「すみませーん。ウーロン茶おかわり」
「七海さんは、バレンタインにクッキーくれたんだ! この俺に!」
「あと、ミニチャーハンも追加で」
失恋してしまった竜也を、慰める目的で、ラーメン屋に来た。テーブル席で、向かい合って座った俺たち。
チャーシュー麺とウーロン茶を頼んで、俺は完全に食事モード。追加でミニチャーハンも。
「何が悪くて、七海さんは結婚してしまったんだよ」
「七海さんって、いくつだっけ?」
「八月で二十七歳」
「ちょうど適齢期ってやつじゃん」
「そうだとしてもさ、あと一年くらい、待ってて欲しかった」
「お、このチャーハン旨い!」
一向に、味噌ラーメンを食べない竜也。このままでは麺が伸びてしまう。
「早く食わないと、麺が伸びるぞ。食って発散すれば?」
「そうだな。今日は思う存分、食ってやる!」
割り箸を割って、すぐに麺を食べ始めた。その勢いは、吸引力の強い掃除機かってくらい、凄い勢い。見ているこっちは、ウーロン茶を飲む手が止まってしまう程に。
「結婚したとしても、七海さんは辞めないんだろ? それなら、毎日会えるじゃん」
「既婚者の七海さんに、会える自信なんてねえよ」
「昼休みにパン買ったり、お菓子買ったり出来るだろ」
「明日から、朔が代わりに行ってくれないか?」
「パシるつもりか?」
「そのつもりはない。あ、でも、朔は屋上に行ってるか」
「俺の貴重な昼休みは、誰にも譲れない」
「紫雲さんと、デキてるんじゃないかって、噂があるぞ」
「デキてる? 俺と紫雲さんが? ないない。普通に友達だけど」
何処から広まったのか。俺と紫雲さんが付き合っているなんて、真っ赤な嘘。余計なお世話だ。
「何で一緒にいるだけで、付き合ってる方向になるのかね。ティーンズの考えが分からないわ」
「お前もティーンズだろうが」
「竜也の奢りだったよな。すみませーん。餃子ひとつ!」
「おま、ちょっと待て。食い過ぎ!」
「ラーメン屋で奢るから、話を聞いて欲しい。そう言ったの、竜也だよな?」
「あーあ。言わなきゃ良かった」
「ゴチになります! 竜也氏!」




