第五話 結
翌日、俺は何事もなかったかのように、学校へ行った。皆驚いていたけど、俺と紫雲さんは気にしない。
「朔、お前大丈夫なのかよ」
「貧血みたいだったから、今日は元気」
「レバー食えよ。レバー」
「分かってるって」
「本当は、紫雲さん絡みか?」
「そんなわけない。紫雲さんに恨まれるようなこと、何もないぞ?」
親友の竜也とは、未だに賭けをしている。霊魔の仕業なら、俺の勝ち。だけど、竜也が霊魔を信じていない。
「前に、学校を強風が襲っただろ? 校舎と体育館が破壊されてさ、滅茶苦茶だった日」
「あー、はいはい。あの日ね」
「あの日、知らない人が二人、校内に居たらしいんだ。しかも、この学校に地下シェルターがあることを知ってた」
「それで?」
「しかもさ、滅茶苦茶になったはずの校舎と体育館が、夜中のうちに綺麗になってた。あれには、驚いた」
その事は、竜也には内緒の話。紫雲さん家に関わる話になってしまう。ここは、然り気無く、受け流さなければ。
「魔法があったりしてな」
「魔法が現実にあるなら、誰だって魔法使いになれるだろ」
「まぁね」
「話は変わるけどさ、朔は知ってたか? 購買の七海さん、結婚するらしい…………」
「そっか~。俺は知らなかったわ。竜也、好きだったもんな。慰めてやんよ」
「何でさ、何が悪くて。うぅ……。」
「ヨシヨシ。まぁ、恋なんて、先着順じゃない。そのうち、運命の相手が現れるさ」
***
昼休みはいつものように、屋上で過ごす。大きなビー玉越しに見る青空に、いつも癒される。
紫雲さんも一緒に、過ごすようになって、今では当たり前の日常。
「空木君の回復力、凄まじいね」
「貧血で倒れたって理由だし、一日休んでても、暇なだけじゃん」
「無理だけはしないでね。今度また、複数体出現したら、その時は二人で一体ずつ退治しよう」
「ご迷惑をおかけします」
「迷惑だなんて、思ってないよ。むしろ、一緒に戦ってくれてることに、感謝してる」
「感謝されることなんて、俺は何もしてない。いつも助けてもらってばかりだし」
徐々に夏へと向かっていく、この時期。梅雨入りはもうすぐらしい。此処彼処に咲く紫陽花が、梅雨の時期を知らせている。
「梅雨入り、もうすぐらしいよ」
「え? そ、そそ、そうらしいね。姉ちゃんの髪が、まとまらなくなる時期なんだ」
「梅雨の時期は、霊魔の出現が多くなるの。お互い気をつけよう」
「ジメジメが好きとか?」
「さぁ。どうだろうね。でも、胸騒ぎがするの。被害が、大きくなるような、そんな予感」
晴れ渡った空が、鈍より曇り空へと変わっていったのは、それから数日後のこと。




