表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紫雲のカグラ  作者: 天城なぎさ
第一話 空と雲
5/102

第一話 五

 放課後の屋上は、昼間と違い、オレンジに染まっている。

 立ち入り禁止な訳ではないのに、どうして皆来ないのか、そこが気になってしまう。


 あの後、俺は紫雲さんを誘って、屋上に来ている。ただ、空を見るためだけに。


「夕陽が眩しい」


 紫雲さんは、早く帰りたがっていたけど、俺が無理やり連れてきた。


「術師ってさ、人を呪ったりするの?」


 純粋な疑問。竜也に言われたからとかじゃなくて、俺が思ったことを聞く。


「呪わない。変な噂があることは知ってる。だけど、人を呪うようなことはしない。霊魔は、人を呪ったり、襲ったりするけど」

「陰陽師っているじゃん。今は、いないのかもしれないけど、紫雲さんも、陰陽師ってこと?」

「陰陽師じゃない。五行と呼ばれる力を使って、霊魔と対抗してる。陰陽師みたいに、歴史に名前は残らない術師なの。大昔から、霊魔は陰陽師によって封じられたって云われてるくらい」


 ある意味、悲運な術師なんだと思う。そんな術師がいるなんて、可哀想としか言いようがない。


「でも、私たちと同じ術を使う術師を、『五行術師』って呼ぶらしい」

「へぇ。五行術師。なんか、ダサカッコいい」

「ディスってるのか、どっちかはっきりして」

「ごめんごめん。でも、五行術師ってさ、聞かないから、なってみたいけどね。でも、姉ちゃんに文句を言われそうで、なんかねぇ」

「それ、さっきも聞いたけど、普通は、ご両親なのでは?」


 それは確かに。大体の人たちが知ってるから、知らない人がいるなんて思ってもみなかった。


「俺の両親は、俺が三歳くらいで他界したんだ。確か、交通事故。記憶がなくて、姉ちゃんから聞いた話なんだけどさ。その後は、姉ちゃんと一緒に、じいちゃん家で暮らして。今、身寄りは姉ちゃんしかいない」


 紫雲さんは、フェンスにもたれ、下を向いている。


「ごめんなさい。変なことを聞いちゃって」

「良いよ。もう、慣れてるし」



 南の方角から、何やら嫌な気配。

 昼間に感じたような気配を、感じている。


「紫雲さん、これって、霊魔だよね。なんか、昼間の気配と似てる」

「同じ。もう一体、いたみたい。空木君は逃げて。ここは、私でなんとかする」

「でも……」


 紫雲さんは少し微笑んで、続けた。


「大丈夫。私、意外と強いから」


 その言葉を信じよう。

 俺は非術師だから、紫雲さんの足手まといになってしまう。


「紫雲さん、無事でいてよ」


 俺は、紫雲さんに言われた通り、逃げるしかない。屋上の出入り口に向かって走り、階段を降りていく。

 どんな霊魔が来たのか、俺はその正体を知らない。



「女子に守ってもらうとか、情けねぇぞ。俺」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ