第五話 八
光がこんなにも眩しいなんて、何気ない事だけど、俺にとっては新鮮。目を開けると、自室の天井が視界いっぱいに拡がっているのは、言わずもがな。
「風吹」
『気分はどうだ? 起きれそうか?』
「気分は最悪だよ。起きるの手伝って欲しい」
『仕方ないな。ほら』
風吹に支えられながら、上体を起こしていく。頭痛を起こしていたかのように、頭が痛いし、気分も良いとは言えない。
『望と晴斗を呼んでくる』
「何から何まで、ありがとう。風吹」
『礼には及ばない。待ってろ』
風吹が部屋から出ていって、束の間の一人の時間。姉ちゃん、どんな顔するかな。驚くのは確実。それとも、泣くとか?
「朔~。良かったぁ、生きてるよぉ。ありがとうございます。風吹さん」
「良かった。声も出るみたいだし、生きてる」
『香楽。お前を入ってこい』
風吹が紫雲さんを呼ぶと、廊下で待っていたのだろう、紫雲さんが入ってきた。もう、夕方だってことを、ここで知った俺がいる。
「空木君」
「紫雲さん。俺が倒せなかった霊魔を、倒してくれたんだよね。ありがとう」
「お礼なんて、言わないで。私が、空木君を一人にしてしまったせいで、こんなことに。ごめんなさい。空木君」
「気にしないで。いつかは、こうなるんだし、それが早かっただけじゃん」
「立てそう? 唐揚げ、食べよう」
いつの間にか、姉ちゃんと晴斗さん、風吹までもがいなくなっていた。紫雲さんに手伝ってもらいながら、ベッドを出る。
「俺、五行術師を、続けて良いんだよね?」
「うん。これからも、一緒に霊魔を退治しよう」
階段を下りていくと、姉ちゃんがショパンの『英雄ポロネーズ』を、かけていた。
「望さん。この曲、『英雄ポロネーズ』ですか?」
「そうだよ~。朔の為にかけてみた!」
「俺は英雄じゃないでしょ」
「気持ちの持ちようなんだぞ。望さんは、朔のことを英雄だと思っているのだ!」
「もしかして、呑んだ?」
「まだ呑んでない!」
軽やかに響き渡る、ピアノの旋律。晴斗さんと風吹が、唐揚げと五目炒めを用意してしてくれている。
『出来たぞ。五目炒めだ』
「唐揚げも。揚げ直したから、アツアツだよ」
「風吹さんの五目炒めだぁ! これ、好きなんだよ~」
『朔も、たくさん食え。体力の消耗が、激しかったんだから』
「ありがとう。風吹。頂きます」
五目炒めを一口食べると、野菜と木耳の歯応えがあるし、中華風の味付けが、なんとも堪らない。唐揚げも塩味で衣がサクサク。美味しすぎて、箸が止まらない。
「美味すぎる。生きてて良かったぁ」
「大袈裟だなぁ。朔は」
「だって、本当のことだし!」




