第五話 七
真っ暗なトンネルの中。前に来た時は、この先に霊魔がいた。襲われているところを、風吹が助けに来てくれたんだっけ。
冷たい風が、出口から吹き込んできて、寒気がしてくる。まだまだ出口は先なのに、身体中の力が抜けていく。
試練って、何なんだよ。五行術師になんて、ならなきゃよかったんだ。
何も知らずに、竜也と今でも笑いあえたのに。俺が、霊魔なんて見えなければ、何も恐れることなく、過ごせたのに。
「俺は、どこで間違えたんだ」
やっと出た声に自分で驚きながら、抜けてゆく力が尽きるまで、出口に向かう。
「もう少しなのにっ! もう少しで出口に!」
『空木朔。貴方は何も分かっていない』
「何がだよ! 俺は、俺はっ!」
『貴方が五行術師になった理由は、一体、何ですか? 何故、非術師の貴方が、五行術師になろうと、思ったのですか?』
葉李の声が何処からか聞こえた。俺が五行術師になった理由なんて、そんなの、決まってる。紫雲さんに助けて貰ってばかりじゃ、いられない。霊魔が見えるのに、何もしないなんて、出来ないなんて、そんなの無責任だ。
「俺は、俺の意思で五行術師になった! 霊魔を、見てみぬふりは出来ない! 俺は、紫雲さんの、助けになりたいんだ! どんな運命になろうとも、俺は後悔なんてしない!」
目映いばかりの光が、俺を包み込む。無重力にでもなったかのように、フワフワと身体が浮いている。不思議な感覚だ。
『空木朔。貴方の呪詛は、祓えました。自らの意思で、五行術師になったのならば、その意思を貫き通しなさい。出口は、もうすぐそこです。自らの足で進みなさい』
光から解放された俺の身体には、抜けていたはずの力が戻っていた。これで、トンネルを抜け出せる。
「ありがとう、葉李」
『私は、何もしていません。五行術師になって下さり、ありがとうございます。貴方の運命に、光り多きこと、願っております』
姿を現した葉李は、俺にお礼を言って、頭を下げてきた。お礼をするなら、俺の方なのに。
『ここへは、戻ってこない方が、よろしいかと。この世界は、永世と現世の間ですので』
「それって、俺は死にかけてたってこと?」
『そうです。出口を抜ければ、貴方の暮らす世界です。さぁ、お行きなさい』
一歩ずつ出口へ向かっていく。俺はまだまだ未熟だけど、紫雲さんがいてくれる。
そう言えば、あの変な声、聞こえなくなったな。俺は、声の主を知っているらしいけど、分からない。そんなことより、今は元の世界に戻って、唐揚げとポテトを食べる!




