第五話 五
姉ちゃんと晴斗さんに支えられ、二階にある自室へ、なんとか行けた。
着替える体力もなく、制服のままベッドへ。
「大丈夫そう? 何か飲む?」
姉ちゃんの問いかけに、首を振るだけで、かなり疲れる。無気力な状態に、姉ちゃんたちは、なす術無し。
「風吹さんが、もうすぐ来るはずだから。心配しなくても、大丈夫だからね。のぞみん」
「ありがとー。晴斗君が居てくれて、良かった」
「ところで、朔君。君が霊魔と対峙していた時、香楽は何をしてた?」
声が出ない状態なのは、家に着いても変わらない。何か書くものがあれば……。
「あ、声出ないんだったね。何か書くものある?」
俺は、机を指差し、そこに書くものがあることを伝える。姉ちゃんは、俺が指差した方に目をやり、そこからシャーペンとメモ帳を取ってくれた。
《紫雲さんは、もう一体の方と対峙してた。俺はテニスコートで、紫雲さんはグランド》
シャーペンを持つにも、力が入らず。ぐちゃぐちゃな字で、伝えたいことを書いていく。
《紫雲さんは、俺がやられた後、テニスコートの奴も、倒してくれたらしい。紫雲さんは何も悪くない。悪いのは、俺自身》
「朔君。君には、五行の力を与えた。だけど、まだ一人では戦えない」
「まだ覚えたばかりだもんね。生きてただけで、良かった」
「香楽には、ちゃんと言っておくよ。今回は、一人にしてしまって、申し訳ない」
《俺は弱いです。練習をいくらしたって、まだ使えない術が、あります》
ピンポーン。と、家のチャイムが鳴り、姉ちゃんが部屋から出ていき、僅かに聞こえる話し声から、誰が来たのか、すぐに分かった。
『よぉ、久しぶりだな。と、言いたいが、この前会ったばかりだな。施術後、揚げてのポテトと唐揚げでも食え』
良かったと、喜んで良いのか分からないけど、風吹が来てくれたから、一安心。
《風吹。来てくれたんだな》
書いた文字を風吹に見せる。ぐちゃぐちゃな字に、風吹は少し困惑気味。
『話せないのか。かなりの呪詛に当たったんだな』
「風吹さん。朔をお願いします」
『香楽もいたんだろ? 何をしてたんだ?』
「別のところで、霊魔と対峙してたらしい。朔君がそう言ってる」
『同時に、二体出現か。まぁ、仕方ないことだな。晴斗と望は、部屋から出てくれ』
姉ちゃんと晴斗さんが、部屋から出ていくと、風吹は俺を見下ろし、両手をかざした。
『これから呪詛を祓う。いいか、何があっても動くんじゃないぞ。動けば、呪詛がお前の身体を蝕むからな』
両手をかざした風吹が、何やら唱えると、徐々に俺は、睡魔に飲み込まれていく。




