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紫雲のカグラ  作者: 天城なぎさ
第五話 どうせ、俺なんて。
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第五話 四

 目を開けた時、視界に広がる景色は、無機質な天井だった。


「あ、起きたようだね。大丈夫?」


 誰だっけ。えーと。あ、渋川先生か。相変わらず、美人。

 ということは、ここは保健室。


 上体を起こそうと、力を入れようにも、全く力が入らない。下半身も動かなくて、ダメだ。


「ぁぁっ、フゥ……」


 かすれていて、声が声になっていない。喉から出ているのは、おそらく空気。


「もう少し寝てて。貧血だと思うけど、声のかすれは、喉の酷使だと思う。ご家族は、お姉さんだよね。電話してあるから、今日はこのまま帰りなさい」


 渋川先生の言葉に、なんとか頷く俺。姉ちゃんが迎えに来るまで、俺は寝ていよう。

 でも、どうやって迎えに来るんだ? 自転車なわけ、ないだろうけど……。


『自らの無力さを、思い知ったか?』


 ホント、誰なんだよ。お前。


『お前、我が名を知っているだろう? 知らぬとは言わせぬ』


 わけ分かんねぇ。俺はお前なんて、知るわけないんだよ。今は疲れてるから、ほっといてくれ。


『そうか。いずれ、相まみえるだろうな』


 気づいた時には、謎の声は聞こえなくなっていた。これで、姉ちゃんが来るまでの間、ゆっくり休める。

静かな保健室で、こうやって休むなんて、小学生から考えて、初めてか。


「失礼します。渋川先生、空木君、まだいますか?」


 眠りが浅いおかげで、五時間目終了のチャイムの音が聞こえるし、誰かが俺を訪ねて来たのも分かった。


「いるけど、寝てる。今は、そっとしてあげて」

「そうですか。分かりました」


 この声、紫雲さん? 紫雲さんらしき声だったような気がするけど、はっきりとは分からない。

 寝てて良かった。今、紫雲さんに会ったとしても、俺は……。


 ***


 しばらくして、姉ちゃんが迎えに来てくれた。車の免許を持っていない姉ちゃんは、どうやって来たのか。生徒玄関に向かうと、そこに晴斗さんがいて、姉ちゃんは、晴斗さんに車を出してもらった様子。


「朔君。その状態だと、霊魔にでもやられた?」


 流石、晴斗さん。ご名答。今もまだ声が出ないため、答えるのは頷いて。


「霊魔か。香楽は、一緒だったんだよね?」


 今度は首を横に振る。声が出ない事は、渋川先生から姉ちゃんに伝えられているので、ご心配なく。


「一緒じゃなかったの? 香楽ちゃん、別行動だったの?」


 次は縦に。何だか、泣きたくなってくる。俺はまだ、ひとりで霊魔を倒すことが出来ないんだと、思い知らされるんだ。


「じゃ、そろそろ行こうか。霊魔にやられただけみたいだし、家まで送るから」

「ありがとう。晴斗君」

「風吹さんを後で、行かせるから。声が出ないのは、霊魔の気に当てられたんだと思う」

「お店があるでしょ。大丈夫なの?」

「のぞみん、今日は何曜日だと思ってるの?」

「水曜日だけど」

「水曜日は、毎週定休日なのです」


 紫雲さん家の食堂は、水曜日が休みなんだ。へぇ。この二人の会話を聞いていると、少し気が楽になる。

 不思議な感覚になるんだけど、これって多分、俺だけ。

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