第五話 三
急いでポケットから紙人形を取り出し、息を吹き掛け、式神を呼び出す。
背中に星形の模様がある、黒柴の式神、星蘭。
「星蘭。帳の中にいる人たちを、外へ運び出して欲しい」
『承知しました』
霊魔が暴れまくるお陰で、砂埃は舞い、ネットの切れ端やらで、視界が悪い。
『ギャー! ギギギィ!』
黒い波動を放つし、俺に向かって拳を振りかざしてくる。
「木術、葉刀!」
霊魔の足元目掛けて、扇を振りかざす。
しかし、びくともしないばかりか、激しさが増していく。
『朔殿、霊魔の核は右腕にある様子。そこを狙って下さい』
「ありがと。星蘭」
帳の中の生徒たちを運び終わった星蘭が合流。核の場所が分かるみたいで、俺は助かる。
『霊魔の気を引きます。朔殿は、その間に、核を破壊してください』
「わかった。やってみる」
俺の側から離れ、荒ぶる霊魔の周りをグルグル回る、星蘭。
霊魔も気づいたようで、星蘭に向けて、拳を振りかざしていく。が、素早い動きで星蘭には当たらない。
舞う砂埃。俺の視界はかなり悪い状態だ。
星蘭の体力は、未知数。だけど、長くはもたないだろうから、一撃で仕留めなければ。
「火術、火炎!」
扇の先から放たれる、燃え盛る炎。
当たったのか分からないけれど、少し動きが鈍ったように感じる。
『フゥードゥー! ギギギィ!』
俺に向かって黒い波動を放ってきた。と、理解出来た時、既に時遅し。
おもいっきり、黒い波動を浴びてしまった。
膝から崩れ落ち、意識は朦朧。星蘭の呼ぶ声は、遥か彼方に聞こえる。
空木君! 空木君! 起きて! 目を開けて!
俺を呼ぶ声を理解出来ても、身体中に力が入らない。
この声は、紫雲さんだ。グランドの霊魔を退治して、こっちに来てくれて、こっちの霊魔も、退治してくれたんだ。
俺って、思っている以上に弱いな。弱すぎるよ。五行術だって、使える術が少ないし、紫雲さんの足手まといだもんな。
オカルト好きなだけで、無力だよ。紫雲さんの力になりたいなんて、思っちゃいけなかった。
ダセーとこ見せちゃったし、術師になんて、ならなきゃよかったんだ。
暗闇の中を、どんどん沈んでいく。ただ、重力に従うように。
『お前は何も出来ない、無力な存在だ。術師になってから、誰かを助けることは出来たか? いつもいつも、助けられてばかり。無力な自分が嫌だろう?』
ドスの効いた低い声。風吹の声ではない。何処からか聞こえてくる。
『霊魔が見えるだけの奴は、見えているだけで、何も出来ないのだぞ? お前は、無力な人間だ。あがくだけ、それは悪あがきになる』
そうだな。俺は無力だ。何も出来ない。悪あがきをして、紫雲さんに助けられているんだから。
『やめちまえ。そうすれば、友人との関係は悪化しない。友人同士、会話も弾む』
竜也の言葉を聞かなかった、俺のせいだよな。竜也は必死に止めてくれたのに、制止を振り切って、俺は五行術師になったんだ。




