第五話 二
霊魔の存在を信じていない竜也に、俺が放った言葉は恐らく通じない。
だけど、紫雲さんが人を呪うわけがないんだから、否定しなければ。
「霊魔が仮に存在しているとして。何で紫雲さんが、いつもいるんだよ。確かに紫雲さんは、陰陽師とかの、術師の末裔みたいだけどさ。都合が良すぎる」
「紫雲さんが、霊魔と対峙出来る力を持っているから、人を助けているんだよ。俺も、その力を手に入れた。だから、紫雲さんと一緒に戦える」
明かしてしまった。だけど、俺も紫雲さんと同じ五行術を使える。
「朔が、陰陽師? あり得ない」
「陰陽師じゃなくて、五行術師。歴史的に名前が残っていない、術師なんだよ」
「信じろって言うなら、俺は信じられない。朔は霊感が強いくらいで、何も出来ないだろ」
確かに、俺は霊感が強いだけで、何も出来なかった。だけど今は違う。俺は五行術師なんだ。
「朔。お前が五行術師だって言うなら、証明してくれ。それまでは、信じられない」
「わかった。それなら、紫雲さんへの誤解も解いてくれ」
「出来なかったら、それまでだからな」
***
それから、何事もなかったかのように、昼休みを迎えた。いつものように、屋上で昼休みを過ごす、俺と紫雲さん。
「空木君、食べ終わった?」
「俺は良いよ」
「あのさ、空木君」
「何? なんかヤバい感じ?」
仲良くなれて、話ながらお昼を食べる仲になれた。
だけど今日は、なんだかおかしい。何かを言いかけて、やめている。
「教室での、斉木君との会話で……」
「あー、あれね」
「何て言うか、私のせいで、二人の仲を悪くさせてしまったよね」
「あれは、紫雲さんのせいじゃないから。それより、早く百葉箱を調べに行かなきゃ。時間なくなる」
朝の会話を、聞かれてしまっていたらしく、紫雲さんは落ち込んでいたらしい。
そんな時、グランドで帳が降りた。
「嫌な気配だと思ったら、グランドで!?」
「行かなきゃ。百葉箱の前に、霊魔をなんとかしないと」
屋上からグランドまでは、かなり距離がある。だからと言って、飛び降りるわけにはいかない。
屋上から下へと続く非常階段を、一気に駆け降りていく。
禍々しい気配が、近づいていくと強くなり、更にテニスコートにも帳が降りた。
「二手に分かれよう。空木君は、テニスコートに行って。私はグランドに行くから」
「分かった。すぐに終わらせよう」
テニスコートに向かい、帳の中に入ると、俺の二倍はありそうな霊魔が、近くにいる生徒を巻き込みながら、暴れている最中。
被害を抑えるために、出す術はただ一つ。
制服のポケットから扇子を取り出し、開口一番に叫ぶ。
「金術、金縛!」
ヒュルヒュルと扇子から出て、霊魔を縛り上げる、護符の着いた縄。しかし、すぐにそれは千切られてしまい、更に暴れまくる霊魔。
乱闘になる前に、気を失っている生徒を、帳の外へ運び出さなければ、ならない。




