第五話 一
最近、少し気になることがある。
一学期の中間テスト期間中に、テニスコート脇から教室棟の脇に移動された、百葉箱。そこから感じる、邪気。
「な~に、ボーっとしてんの? 朔」
「えっ、ボーっとしてた?」
「朝から、考え事でもしてたのか?」
「まぁ、そんなとこ」
何かが気になって、考え事をしてしまう。百葉箱といえば、色々と云われがある。
「竜也はさ、あの百葉箱、気にならね?」
「ならないな。気になっても、俺にメリットはない」
「そっか~。俺だけか」
「気になることがあるのか?」
「あるんだよ。あるから、考えてる」
だからと言って、考えても答えは出てこない。無駄だと分かっていても、考えてしまう。俺の悪い癖。
「空木君。ちょっと良い?」
「何?」
後ろから、紫雲さんに話しかけられ、少し動揺している。学校で話す時は、基本的に二人きりの時だけ。
五行術師であることは、皆には知られていない。
廊下で話すにしても人がいるし、俺たちは、誰もいない多目的教室へ行くことに。
「それで、俺に何か用?」
「空木君は、気にならない? 百葉箱のこと」
「気になってる。もしかして、紫雲さんも?」
「うん。なんかすごい、邪気を感じるの」
俺だけではなかった。紫雲さんも感じているなら、何かが起こるかもしれない。
「昼休みに調べようと思うんだけど、空木君はどうする?」
「俺も調べる。百葉箱って、色々と云われがあるでしょ。オカルト好きとしては、放っとけない」
「それなら良かった。お昼食べてからにしよう。時間掛かりそうだから」
中間テスト期間中に移動された百葉箱だけど、テスト期間から既に十五日は過ぎている。
今になって邪気を感じるなんて、なんだかおかしい。
「教室に戻ろう。それじゃ、また昼休みに」
***
教室に戻って、また竜也とお喋り。
多目的教室に行っていた間も、待っていてくれたようだ。
「紫雲さんと何を話してたん?」
「竜也には分からない話」
「オカルト系か」
竜也とは小さい頃からの、友人。親友とでも言っても良いくらい、分かりあえる。
「それ以外に何があるわけ?」
「朔さ、紫雲さんと話してて、何ともない?」
「ない。まったく何も」
「だったら、その絆創膏の類いはなんだ? 顎とか額とか、指にだってしてる」
霊魔との戦いは、連日行われるから、どうしても怪我は付き物。
五行術師として、俺はこの傷を誇りに思う。
だけど、竜也はそうじゃない。紫雲さんに対する都市伝説を、信じている。
「紫雲さんと、よく一緒にいるらしいな」
「だとしても、紫雲さんが誰かを呪うなんてこと、一度もない。つーか、紫雲さんの呪いを受けた奴いんの?」
「俺の知り合いにはいない。だけど、呪いを受けた奴がいる。黒い影に襲われて。気づいたら、そこに紫雲さんがいるってな」
そう言う事か。霊魔に襲われたんだ。見えない人たちには、霊魔は見えず、命の危機に見えた霊魔の影か。
「竜也、その呪いを受けた奴は、霊魔に襲われただけだ。むしろ、紫雲さんは、そいつを助けただけ」




