第四話 九
式神たちが霊魔を探してくれている間、俺たちも霊魔の気配を頼りに、探し回る。
「いない。移動してるみたい」
「式神たちも戻って来ないし、強敵だったりする?」
「とにかく急がないと、被害が出てくる。帳が降りていないから、恐らく……。そっか、地中!」
「えっ、地中?」
「空木君、止まって」
片膝をついて、しゃがみこんだ紫雲さん。そして、閉じた扇を道路に向けると。
「いた。土術、地ならし!」
ガタタ。と振動を感じた瞬間、地中から聞こえる、甲高い悲鳴。
『ギギャアアア!』
「出てくるよ」
「マジで!? あ、とば……」
帳と言いきる前に、地中からにゅるっと出てきた黒い人形。
『ギギャアアア!』
ビューン! ドドドッ!
出てくるなり、俺たち目掛けて黒い波動を放ってくる。
「おわぁっ!」
「空木君、大丈夫!?」
黒い波動に当たりかけた俺は、間一髪、なんとか避けることが出来た。ただし、バランスは崩したけれど。
「平気。平気なんだけど、立てない」
何故か体中に力が入らない。
「えっ!? まさか、波動に当たった?」
「そんなはずない。でも、力が入らないんだ」
「後で、風吹さんに診てもらおう。今は、休んでて」
再び波動を放とうとしている霊魔。全身に力が入らない俺。
対峙しているのも、時間の問題かと思われた瞬間。
『ギギャアアア!』
「火術、火炎!」
霊魔の放つ黒い波動と、紫雲さんが放った火炎がぶつかり合い、衝撃波が辺りに拡がった。
「うわっ!」
衝撃波に気圧され、砂埃から目を庇うだけで精一杯。
砂埃が去ると、霊魔と対峙する紫雲さんの姿が。フーッと息を吐いた紫雲さんの目が、俺の知っているものではない。
「水術、水君!」
水君は、大量の水で霊魔を包み込んでしまう術。でも、この後はどうするのか。
「水君の使い方を、見ててね。空木君」
実戦でも、俺に術を教えてくれるなんて。
「水君の後は、核を狙う。一撃なら飛沫。連撃なら泡沫。私のお気に入りなのは、水術、泡沫!」
バシャン! バシャン! バシャン! バッシャーン!
『ギャアアアアア!』
大量の水の中で、もがきあがく霊魔は、最後のあがきと言わんばかりに、俺たちに向かってもう一度、黒い波動を放ってきた。
「マジで!?」
「空木君、頭を下げて! 火術、火炎!」
ドドーン! バッシャーン!
波動が水を抜け、大量の水が砕け散ると、紫雲さんが咄嗟に火炎を繰り出し、霊魔の核を破壊。
「終わったぁ」
「はぁ。はぁ。空木君、大丈夫? 立てる?」
「無理そう。です」
「式神たちを呼び戻すね。空木君も召喚陣に息を吹き掛けて」
言われた通り、ポケットから召喚陣の紙を取り出し、息を吹き掛けると、白い煙とともに黒毛の柴犬、星蘭が戻って来た。




