第四話 八
紫雲さん家を出てすぐに、嫌な気配を感じた。これは、霊魔だ。そう思った矢先。
「空木君、行ける?! 霊魔が何処かにいるみたい!」
紫雲さんが食堂から飛び出して来た。
「俺、火術もまともに使えない。どうしよう」
「大丈夫。落ち着いて。火炎は使えるでしょ。使える術だけでいい。空木君に出来ることだけ、やってみて」
「晴斗さんと風吹は、食堂があるんだもんね」
「うん。お姉さんは、食堂に居てください。兄も風吹さんも居るので」
「唐揚げ食べてるから、霊魔退治してきな!」
唯一の肉親だし、かつて狙われたことがあるだけに、五行術師としての俺を、応援してくれている姉ちゃん。
「行こう! 空木君!」
気配を辿り、黒い帳が降りている場所へ。だけど……。
「気配は感じるのに、帳が降りていないなんて」
「こんなこと、よくある?」
「時々ね。珍しいことでもない」
「どうする? 二手に分かれる?」
「効率的なのは、そうだけど、この状況で空木君を一人に出来ない」
ですよね。まだ、まともに術を使えない俺だけで対峙しても、殺られて終わるだけ。
一人で行動出来ない以上、紫雲さんの援護が必要になってくる。
「あれ? 気配が消えた」
「どうかした?」
「ううん。霊魔の気配が消えたの。滅多にあることじゃないから、ちょっと驚いてる」
「紫雲さんでも、そんなことがあるんだ」
「とりあえず、式神に見回ってもらう。あ、兄から受け取った? 式神の召喚陣」
「うん。でも、使い方がイマイチ分かってない」
「息を吹き掛ければ、それだけで式神は召喚されるの。やってみて」
ポケットに入れていた、式神の召喚陣を取り出し、フーッと息を吹き掛けてみた。
すると紙が手から落ち、煙とともに姿を現したのは、黒毛の柴犬。
しかも、良い子にお座りをしている。
「おお! この犬が、俺の式神?」
「うん。空木君の式神は、黒毛なんだね」
「紫雲さんの式神は?」
「私の式神は、赤毛の柴犬だよ」
そういうと、自分の召喚陣をポケットから出してくれて、式神を召喚してくれた。
「私の式神の、乱麻。ほら、乱麻。この人が、空木君」
『非術師だと聞きました。ボクは香楽の式神、乱麻です。以後、お見知りおきを』
「あ、はい。よろしく」
犬が喋ったような気が。聞き間違いじゃないよな。絶対、この乱麻は喋った。間違いない。
「空木君も、名前付けて良いよ」
「えっと、この式神はオス? メス?」
「オスかな。多分」
オスか。オスねぇ。うーん。お、星形の模様があるんだ。可愛いな。
「えっと、じゃあ。星蘭。背中に、星のような形で、白い模様があるから」
『良き名をありがとうございます。朔殿』
俺が星蘭と名付けた黒柴の式神は、律儀にペコリと頭を下げ、律儀にお礼まで言うか。
「喋った。式神だと喋るんだ」
『不思議なことでもありませんよ。我々が話すことが出来るのは、五行の力のおかげなのです』
「早速だけど、お願いして良い?」
『何なりと、お申し付けください』
「今、霊魔の気配がするでしょ。この気配の霊魔を、探して欲しい」
『お任せを。では』
ボワン。と、煙に煙に包まれ、姿を消した乱麻と星蘭。
俺たちが見つけられない霊魔を、式神の力を借りて、探し出す。




