第四話 六
「朔きゅん! 望さんを一人にして行くなんて!」
「まぁまぁ。落ち着きなよ。のぞみん、お水飲む?」
「ううぅ。晴斗きゅ~ん! 好きだよぉ! 大好きだよぉ!」
「ほら、お水。飲んで待ってて。朔君、もう少ししたら、来るからさ。少しお話しでもする?」
部屋の外から聞こえる、姉ちゃんの声。うるさくて集中出来ない。
だけど、酔った姉ちゃんの介抱を、晴斗さんにしてもらうなんて、なんてお礼したら良いのか。
「お姉さん来たみたいだね」
「ごめん。うるさくて」
「気にしないで。兄も飲むとうるさいから」
「晴斗さんに介抱してもらって。早く終わらせなきゃ」
「兄なんて、お姉さんと話せて良かったんじゃないかな。邪魔しないでおこう」
まぁそうだよね。今は練習したい。姉ちゃんの事は考えないようにしないと。
「お手本を、見せてもらっても良い? 俺、やったことなくて」
「あ、そうだね。烈火の場合、攻撃対象の霊魔に近づいて使うの。扇を刀のようにして使う技」
「刀?! えっ?!」
「驚かないで。木術にも、超近接技があるから」
「葉刀だっけ。そっか、あれも刀」
「じゃあ、見せるね。いくよ。火術、烈火!」
両手で扇を持ち、勢い良く振り下ろされる。扇が炎に包まれ、霊魔の核を切り裂くような鋭い刃に。
「これが、烈火か」
「とりあえず、今日は火術を覚えて欲しいな。じゃ、やってみて」
「いきまーす。ふぅ。火術、烈火!」
紫雲さんのように、勢い良く振り下ろす。だけど、出てきた炎は、か細い。
「何で……。何が違うん?」
「もしかしたら、炎を怖がってない? この術は人間には無効だから、安全だよ」
「えっ、無害なの? 炎が手に当たるんじゃないかって、内心思ってた」
「じゃあ、もう一度。はい、やって」
「ふぅ。いきまーす。火術、烈火!」
先程よりも燃え盛る炎を見た俺は、安堵のため息。正解かは、分からないけど。
「はぁ。これが、正解?」
「練習は必要だけど、形にはなってた。あとは、業火だけだね」
「業火ってことはさ、かなり燃え盛るよね?」
「かなり燃え盛るから、覚悟してね」
「はいぃ」
「火術、業火!」
紫雲さんが繰り出した業火は、燃え盛る炎の渦。火炎と烈火の連続で、俺はヘトヘト。
「これが業火なんだけど、出来そう?」
「体力がもたないかも」
「無理しなくて良いよ。今はまだ、練習中なんだし、無理のない範囲でやってみて」
「イメージは炎の柱?」
「うん。それが良いかも。空木君のやりやすいイメージを作って」
「炎の柱かぁ。燃え盛る炎の柱……。よし。火術、業火!」
ブワッ!
俺の目の前に、熱と共に現れた、炎の柱。
イメージしていたものと同じく、燃え盛っている。
「うん。良い感じ」
「本当!? やった。でもまだ違うよね」
「しばらくは火術を練習してね。霊魔に関しては、私たちでなんとかやるから」
「すみません。足手まといにならないようには、頑張ります」
「私だって、最初はそうだった。だから、気にしないで」
「そろそろ、時間だよね。また聞きに来ます。お邪魔しました」
早く帰って、火術の練習。
姉ちゃんを寝かせてからじゃないと、うるさくて集中出来ないだろう。




