第四話 四
紫雲さん家の食堂を出たのは、食べ終わってすぐ。
ゲーセンに向かって歩いている途中、姉ちゃんがニヤニヤとしていた。
「望さんは、朔きゅんと対決がしたい!」
「えー。なんでやらなきゃいけないの」
「そんな棒読みで言わなくたって良いじゃないか。望さん、泣いちゃうぞ」
つまり、ゲーセンに行きたいだけの、姉ちゃんだったということか。
時間潰しなんて、俺のためではなく、自分のためだった。
「さぁ、両替をしようじゃないか! 朔きゅん!」
「その呼び方やめて。周りがドン引きしてんじゃん」
「お、あれ楽しそう! 行くぞ、朔きゅーん!」
「だからやめろって!」
両替を終え、無理やり最初にやらされたのは、何故かプリクラ。
姉ちゃん、完全に酔いが回ったな。
「何にしようかな~。朔きゅんは、どの背景がお好み?」
「俺は今すぐここを出たい。プリクラくらい、姉ちゃんだけでやって」
「ううぅ。望さんとプリクラなんて、一生に一度でも撮れるか分からないんだぞ。撮れる時に撮った方が良いぞ」
「高校生の時に、晴斗さんとは撮らなかったのかよ?」
「撮った。まだ持ってるはずだけどね~」
「前に、晴斗さんの名前忘れてたよな?」
「それは……。酔っていたからだぞ! ほれ、撮るよ。ポーズして!」
カシャッ。
何枚撮ったのか分からないまま、無理やり撮らされる、プリクラ。
早く終わって欲しいけど、姉ちゃんが盛りまくっている。
「うほぉ! 望さん、めっちゃ美人! 朔きゅんも、イケメンなっている! ほれ、見るかい?」
「俺、他の見てくるから、姉ちゃんは好きにしてて」
「えー。一緒に回らないの~?」
「俺の年齢分かってる? 高校生なんだけど」
「朔きゅんと遊びたいぃ。望さんは、クレーンゲームがしたいぃ!」
「時間と金がない。俺はやらない」
クレーンゲームなんて、俺が苦手とする分野。簡単に取れる奴らの気が知れない。
ゲーセンに来る度、クレーンゲームにだけは、手を出さないでいる。と、いうのに。
「お、これは、望さんの大好きな、ウサギちゃん! こんなにたくさんあるなんて、楽園なのか。ここは」
大好きなウサギのぬいぐるみを見つけて、はしゃぎまくりの姉ちゃんは、百円玉を二枚入れると、いとも簡単に手に入れた。
「へへ~ん。この望さんに、出来ないゲームはない!」
「ホラゲーはダメなくせに」
「ホラゲーは別腹と、昔から言うじゃないかぁっ! おやおや。朔きゅんもやりたいのかい?」
「俺は別のゲームがしたい!」
酔っぱらいの姉ちゃんを、相手にしてはいけない。だけど、ここは公共の場所。野放しにしようものなら、恥なんてものじゃ済まないのだ。
「姉ちゃん。彼処に、パワーストーンを掬うゲームがあるけど、やらないの?」
「おお! やらないわけなかろう! 朔きゅんも一緒にやるぞ!」
「何故俺まで……」
何度も言おう。酔っ払った姉ちゃんを、野放しにしてはいけない。




