第四話 二
姉ちゃんと一緒に出掛けたのは、かなり久しぶりのこと。
缶ビールを一本飲んで、ほろ酔い気味の姉ちゃんは、ルンルンしている。
「はぁ~! 久しぶりだよね~。朔とこうして、出掛けるのは」
「いつぶりになるか、忘れたけどね」
「ちょっとは、お姉さんを見なさい! 歩いてしか行けないんだから!」
「何で昼前から飲むかね。普通飲まないでしょ」
「だってさ、飲みたくなるもんよ? 我慢は良くないし」
どうしたら、こんなことが言えるのか。
弟が五行術の練習をしている時に、姉は昼前からビール。まったく。弟の顔が見てみたいよ……。まぁ、俺だけど。
「姉ちゃんさ、晴斗さんと付き合えば?」
唐突に聞いてみた。と言うより、晴斗さんから送ってもらった時に、言われていた。どう思っているのか、聞いて欲しいと。
「付き合いたいよ。出来ることならね。でも、晴斗君がどう思っているのか、分かんないじゃん」
「晴斗さんに聞いてみたら? 俺がどうこう言えるわけじゃないし、二人の問題なんだから」
「そうなんだよね~。朔。香楽ちゃんとは友達で良いの?」
「友達で良い。好きな人がいるわけじゃないけど、紫雲さんとは、友達でいたい」
それから姉ちゃんは、何も言わなくなった。ただ、紫雲さん家に向かって、歩いていくだけ。
「お、見えてきた! 競争するかい?」
「しない。そんな年じゃないでしょ。それでも、保育園の先生ですか?」
「ううぅ。それは言わないでおくれ」
時々、姉ちゃんは、保育園児よりも幼稚なんじゃないかと、思ってしまう。
これで、高校の時はモテていたなんて、信じられない。
「空いてるかね。混んでたら、待とう!」
「マジで!? 待つくらいなら、他で食べたい」
「お話したいんでしょ。だったら、待つ!」
「はいはい。待ちますよ」
ガラガラと、引き戸を開けると、中はお昼時にしては、空いていた。
紫雲さんが接客をしていて、晴斗さんと風吹が厨房なのだろう。
「いらっしゃいませ。あ、空木君。お姉さんも。どうぞ、こちらへ」
「香楽ちゃんが、接客してるんだね~。偉いね~」
「土日だけですよ。ご注文決まりましたら、お呼びください」
白いブラウスにスカート。コバルトブルーのウエストエプロン。
昨日の巫女さんも可愛いけど、今日のウエイトレス姿も良い!
「朔は何食べる?」
「姉ちゃんは? 飲んだばかりなんだから、考えてよ」
「望さんは、タレかつ丼にする! 絶対美味しいやつでしょ」
「俺は……。トンカツ定食にする。紫雲さ~ん!」
もうお腹ペコペコ。姉ちゃんが注文してくれている間、俺はテレビを見ながら水を飲む。
俺が見た時、バラエティー番組をやっていて、雑学クイズを出演者に出している。
『それでは、第三問! バドミントンで使用されている、こちらのシャトル。この羽の正体は一体、何でしょう! さぁ、お考えください!』
いやいや。考える時間がもったいない! 答えはただ一つ! こんなの、考えなくても、誰でも知ってる。
「バドミントンのシャトルの羽なんて、人工の羽でしょ」
「朔く~ん。本当にそう思うか~い?」
「どう考えても、人工の羽。あれが、鳥の羽なわけない!」
画面の向こうの芸能人たちは、答えを書いていっているわけで。姉ちゃんが言っている事が、果たして正解なのか、それはまだ分からない。
『さぁ! 答えが出揃ったようです! 正解を見てみましょう!』




