第四話 一
日曜日になると、昨日までの雨が嘘みたいな、晴れ空。
術の練習を、朝からやってみる。
紫雲さんから教えてもらったことは、『五行の力を感じること』。
五行って何だよ! 晴斗さんからもらった護符を持っていると、すぐに術を出せるのに! なんて、文句を言ってみたりもする。
「朔~! 順調かーい?」
庭で練習中の俺を邪魔してくる、のんきな姉ちゃん。こっちは術が出なくて、イライラしているというのに。
「うるさいな。邪魔しないでくれる?」
「邪魔なんてしてないでしょ。可愛い弟の為に、アルピス買ってきてあげたというのに。姉ちゃんは、泣くよ」
「後で飲むから、冷蔵庫に入れといて」
「ううぅ。望さんは、ビール飲むから!」
勝手にどうぞ。なんて言ったら、完全に泣かれるな。多分。ここは、何も言わずに、練習していよう。
「火術、火炎! か、え、ん!」
シーン。扇から、何も出てこない。せめて、火の粉くらいは出てよ。
本当に、俺は、五行の力を授かったのか?
信じてないわけじゃないけど、信じられなくなってきた。
「ぷはー! 日曜日の昼前から飲むビールは、美味しい! 朔も少し休めば? これから『ブランデンブルク協奏曲』聴くんだけど、一緒にどうだーい?」
「後にするって! それに、気分的には『田園 第一楽章』が良いんだけど」
「それも良いね~。仕方ないから、『田園』にしてあげよう」
はぁ。一息つくとしよう。アルピス飲みたいし、朝からやってると、嫌気もしてくる。
縁側に座り、休憩。
「晴斗君か香楽ちゃんに、連絡してみたら? あ、日曜はお店か。もうすぐお昼時だし、忙しいか」
「五行を感じるって、意味分かんなくなった。アルピス、濃いめにして」
「はいはい。まぁ、『田園』でも聴いて、自然を感じな」
広大な大地を感じられる、『田園』。かの有名な作曲家、ベートーベンが作った、交響曲第六番。
第一楽章しか聴いたことないけど、この曲だけは、好きだ。
「ほれ。アルピス」
「ありがとう。姉ちゃん」
「まぁ、落ち着くことだろうね。五行ってさ、自然の力なんだって。火の術なら、炎をイメージしてみたら?」
「炎をイメージ……。テレビで見た、大文字焼きみたいな?」
「やってみたら? 意外と出来たりして」
ニヤニヤしている姉ちゃんを横目に、俺は、庭に向かって術を放つ。
イメージは、京都の大文字焼き。燃える炎が、俺の頭に浮かんだ。
閉じた扇を持つ手が熱い。これは、出来るか?!
「火術、火炎!」
ブワッ。扇の先から、炎の環が出てきた。これが、火炎なんだ!
「姉ちゃん! 見てた?! 俺、出来たらしい!」
「それ、扇で行き先が操れるの? なんか、扇を動かした方向に、その炎の環が動いてる」
「紫雲さんに聞いてみないと、何も分からないんだ。これから行っても良い? ついでに、お昼ごはんも済ませるし」
「じゃあ、望さんも行こう! 晴斗君の料理を食べれるわけだし!」
ほろ酔い気味の姉ちゃんを連れ、これから紫雲家に向かう。
歩いて行くとなると、ちょうどお昼時で良いかもしれない。




