第三話 八
霊魔が見える人に、話を聞いてみたい。か。
今朝の新聞のコラムに、霊魔に関する内容が書かれていた。紫雲家の他に術師がいたことと、歴史的文献から、五行術師に関する内容が書かれていないこと。
謎に満ちた五行術師に、今日から俺はなるんだ。
紫雲家は、学校から近い。至って普通の、昔ながらの食堂。一階がお店で、二階が住居らしい。
外階段を上がり、玄関のチャイムを押す。
タタタ。と、足音が聞こえ、すぐにドアが開いた。
「いらっしゃい。空木君。入って」
巫女さんのような装いの紫雲さん。白衣に、朱い袴。
場所が神社なら、絶対に巫女さんにしか見えない。
「巫女さんみたい……。スゲー」
「空木君? 見惚れてないで、早く入って」
「はい。すみません」
玄関で靴を脱ぎ、紫雲さんの後ろについていく。後ろ姿は、完全に巫女さん。
『来たようだな。少年』
「風吹。遂に俺は、術師になるからな。無力ではなくなる!」
『楽しみだな』
廊下で、白いワイシャツに黒いスラックス、黒いウエストエプロン、を着け、ベージュのキャスケットを被った風吹と遭遇。
更に奥から、風吹と同じ装いの、紫雲さんのお兄さんも登場。
「えっ、もう来たの? 早くない? うつ、じゃなくて、朔君」
「おはようございます。晴斗さん」
「まぁ良いか。俺と風吹さんは店があるから、下に行くけど。香楽の巫女コスが可愛いからって、手ぇ出すなよ?」
「出しませんよ!! 俺、軽い男だと思われてます?」
「妹を持つ兄なら、誰もが思うだろう!」
そうなのか? よく分からないけど、まぁ良いわけないか。
「仕込みあるでしょ。早く行って。私は、儀式が終わり次第、行くから」
『そうだな。行くぞ。晴斗』
踵を返した二人は、そのまま、廊下の突き当たりに行った。
「じゃあ、私たちはこっち。儀式と言っても、単に自分の血を混ぜた水を飲むだけ。祝詞は無いし、呪文も無いから、すぐに終わるよ」
神棚と小さな祭壇のある、和室に通された俺は、今朝の新聞のコラムの事を話す。
「今朝の新聞のコラムで読んだんだ。霊魔と鬼と術師について、書かれてた」
「呪怨霊主が解放されてるからね。オカルト好きな人なら、絶対知ってる。霊魔だけなら良いけど、奴が来ると皆、無事じゃ済まない」
「平安時代には、存在してたんでしょ?」
「みたいだね。護符、貰います」
「あ、お願いします」
ずっと持ったままだった護符を、紫雲さんに渡すと、榊が両脇に置かれた、小さな祭壇に置いてくれた。。
そして、何かを呟いている。
「天界の神々に、かしこみかしこみ申す。かの者に、五行の力を与えたまえ」
座るよう促された俺は、祭壇の前に敷かれた、座布団の上に座った。
祭壇には、塩の入った小皿と、水の入った盃。それと、短刀。燭台もあり、蝋燭には火が灯っている。
「その短刀で、どの指でも良いから、一滴の血が出るくらい切って」
これで!? マジか。意識して切ったことないからな。覚悟を決めよう。
シュッ。勢いが大事だと思った。だから、何があったのか分からないくらい早く、動かした。
左手人差し指にヒットし、指先から血が出ている。




