第三話 七
霊魔。それは、人間の負の感情から生まれた、悪魔。
それなら、悪魔と同じなのではないかと、思えてならない。
かつて誰かが云うには、霊魔は人間の負の感情から生まれ、悪魔は人間の欲によって生まれた存在。
何故、負の感情から、霊魔が生まれたのか。
霊魔の頂点には、長が君臨している。名を、呪怨霊主という。
人の姿をしており、全ての霊魔を統べる存在。伝書によると、平安時代には、奴は存在していた。
人々の前に現れると、次々と人間の魂を奪っていったそう。
霊魔を最初に生み出したのは、奴だ。人々を襲い、負の感情を極限まで溜め込んだ人間から、霊魔が出現。
奴のせいで、人間は霊魔の存在にも恐れるようになってしまった。
無力な人間は、ただ魂を喰われるだけの、食糧。奴に太刀打ちなど出来ない。
しかし、魂には負の感情のみならず、正の感情も存在する。奴はその感情を嫌い、この世を形成する、五行の力をも嫌った。
五行の力を操れるのは、神が生み出した、悪魔の対の存在。鬼。
天界から地上に降り立った鬼は、数少なくも、人々が霊魔に苦しめられていると知り、霊魔に対抗。五行の力を使った術で、霊魔を退治。
しかし、霊魔は次から次へと現れ、鬼だけでは手に負えなくなった。
そんな時、人間の中から、自らも霊魔を退治したいと、願い出る者たちがいた。その者たちは後に、紫雲、八雲、出雲、東雲の氏名を持つ者たち。
「我々も霊魔を退治したい。五行のお力を、分けて頂けないか?」
『五行の力は、鬼に与えられた力。他にも我々には術があるゆえ、分け与えても良い。共に、霊魔に立ち向かおうぞ』
祭壇には、星形の護符が、四枚。そして、新月から満月まで月光に当てた、浄めの水。
儀式と言えど、それはただ自らの血を混ぜた、浄めの水を飲むだけ。
鬼は四人の者たちに、短刀を渡し、五行の術を授けた。
その後、四人の者たちは、五行術師と呼ばれ、鬼と共に霊魔退治。
現在、五行術師として霊魔退治をしている者は、紫雲と東雲の人間のみ。八雲と出雲の人間は、後に霊魔が見えない子孫が生まれたために、五行術師を辞めたそうだ。
消え行く五行術師。歴史的文献には、何も書かれていない、謎の術師。
五行術師が古来より存在していたのか、何故、歴史から消えたのか。疑問に思う。
霊魔を見ることが出来ない私は、霊魔の存在を大学生になるまで、知らなかった。昔話の話のみなのだと、考えてしまっていた。
もし、霊魔を見ることが出来る人間がいるならば、一度話を聞いてみたい。




