第三話 四
竜也から奢って貰ったオレンジジュースを片手に、教室に戻る俺。
――霊魔なんていると思ってんの?――
竜也のこの一言に、俺は見ている世界が違うんだと思った。
いや。実際、違うんだけど。
何だか、異世界を見ているような気になる。
「あ、いた。空木君」
階段を降りてきた紫雲さんと、踊り場で遭遇。俺を探していたようで、俺を見て安心した様子。
「ちょっと、時間ある?」
「あるけど。どうかした?」
「空木君に聞きたいことがあるの。教室、行こ」
「ん? うん」
教室に戻るため階段を上がる。その間、二人とも無言のまま。
待てよ。放課後の誰もいない教室で、話と言えば……。
いやいやいやいや! まさか、そんなはずは!
「それで、俺に何の用?」
「えっと。空木君、その……」
えっ、マジ!? マジなやつ?!
「昼休みのダメージ、大丈夫? まだ痛むとかない?」
「あ、ないですね。全く。風吹のおかげで、痛くはないよ」
「本当? どこも痛くないんだね?」
「うん。痛くない」
ですよね~。分かってはいたけど、違うよね~。
俺って、おっちょこちょいだな。
「急だけど、明日空いてる?」
「空いてる」
「家に来て。授術ノ儀を行うから」
「じゅじゅつのぎ? 何それ?」
「術を授かる儀式。昼休みに話したでしょ。今夜、満月らしいから、ちょうど良いよね」
「遂に、俺が術師になれるんだね!」
告白なんかより、こっちの方が嬉しい!
遂に、術師になれるんだ!
「さっき、姉ちゃんからメールが来ててさ、今夜家に来ない? 姉ちゃん。今日、有給で休みでさ。餃子パーティーをしたいらしい」
「お邪魔して良いの?」
「パワーストーンの話を、たくさんしたいらしいです。それに、お兄さんも来るって言ってる」
「えっ、お兄も来るの!?」
「あはは。紫雲さんの、お兄さんの呼び方、面白い」
「小さい頃からずっと、こうだったし……。変?」
「そんなことない!」
そんなこんなで、誰もいない教室で二人きり。
恋愛モノだったら、ここで主人公がヒロインに告白。もしくは、ヒロインが主人公に告白。
そんな展開が普通だけど、俺たちはそんな関係ではない!
絶対とは言いきれないけれど、ないのだ!
「空木君?」
「へ? 何?」
「大丈夫? ボーっとしてるけど」
「大丈夫。大丈夫」
「帰ろっか。家、おいでよ」
何を考えているんだよ! 俺! そんな関係じゃないだろ!
空木と紫雲の関係は、姉と兄に任せるべきだ!
「明日が、土曜日で良かった。口臭気にならないね」
「それ、大事な事ね。ブレスケアのタブレットあるから、ご安心ください」
「楽しみだね~。普段、兄と風吹さんとの食事だから、味気無くて」
「家事は、誰が作ってんの?」
「風吹さん。専業主夫みたいな感じかな。買い物は兄と私でやってる」
「風吹、家事も出来んの!? スゲーな」
「何でも出来る鬼なんだよ。風吹さんは」




