第ニ話 九
体育館を完全修復したのは、あれから一時間半後。
紫雲さんのお兄さんの。いや、紫雲さんのご厚意に甘え、紫雲さんのお兄さんの車で送ってもらうことに。
「忘れ物はないか~い?」
「ないよ。早く帰らせて。空木君だって帰りたいでしょ」
「はーい。では、発車しまーす」
紫雲さんのお兄さんの、黒い乗用車の後部座席に乗り込み、自宅へ向けて出発。
「紫雲さん家は、学校から近い?」
「あー、えっと。近いかな。大体歩いて十分くらいだし」
「近くて良いね~」
隣に座った紫雲さんと、少し会話をする。無言だと、何だか息苦しいから。
コホン。と、軽く咳払いをした紫雲さんのお兄さんを、俺は無視出来ない。
「空木朔君。君は、五行術師に向いているとも、向いていないとも、言いきれない」
「それは、どういうことですか?」
「君は霊魔と対峙した時、金縛りを出すまでに、数秒使った」
「使いました。動き封じるか、攻撃するか、迷ったので」
「ゲームでもそんな感じ? バトロワ系だと、周りを見て、瞬時に判断しなきゃでしょ」
「そうですね……。時々、判断に迷いが出て、殺られることがあります」
「判断力を養う所からか……。着いたよ」
あっという間に、自宅に到着。あれ? 自宅の場所、伝えてない?
「ありがとうございました。あの、自宅の場所、よく知ってましたね」
「そりゃあ、知らないわけないでしょ。元カノの家なんだから」
「えっ!?」
「お、お兄。今、何て?」
俺も紫雲さんも、今まで知らなかった事実。内容が内容なだけに、驚きが隠せない。
「だから、元カノの家でもあるの!」
『香楽は知っていると思ったが、知らなかったか』
「風吹さんは、知ってたの?」
『当たり前だ。付き合っていたのは、十六の時か』
「まさか、そんなこと、普通ある? 空木君」
俺を見て言わないで。俺だって、そんな話聞いたことないし、姉ちゃんは、今まで彼氏なんていたことないはず。
「まぁ、元カノと言っても、付き合っていたのは半年くらいだし」
「そうなんですか。でも。家に来たこと、ないですよね?」
「君がいない時だったのかな。来たことある」
「十六歳ってことは、俺が八歳の時ですよね。遊びに行っている時ってことですかぁ!?」
「まぁまぁ。落ち着きなよ。変なことは、してないからさ!」
「そんな話じゃありません!」
キキーッ!
いきなり自転車のブレーキ音が聞こえ、窓の外を見てみると、そこには、仕事終わりの姉ちゃんが。
「あ、晴斗君じゃん。久しぶり」
よーく見ると、顔を赤らめている。まさか、本当に付き合っていたのか?! 知りたい!
ドアを開け、車から降りると、姉ちゃんに事情を説明。
納得してくれたのは良いけれど、俺は、姉ちゃんと紫雲さんのお兄さんの関係が気になる。
「のぞみん、元気そうじゃん。あれから彼氏は出来たかい?」
「それが全く。男っ気すらないよ。晴斗君は? 彼女出来た?」
「全く出来ないんだよね~。もしだったらさ、また、付き合う? 俺ら」
「うーん。考えとく」
これは、二人だけの世界にするべきだな。




