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紫雲のカグラ  作者: 天城なぎさ
第二話 夢幻の世界
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第ニ話 八

「空木君! 空木君! 目開けて!」


 この声は、紫雲さんだ。涙声になってる。そっか。俺、霊魔に殺られたんだ。


「お(にい)! 何やってたの?! 空木君はまだ、術を知らないのに!」

「悪かったって。俺は、空木朔君の実力を見たかったの」

『落ち着け。香楽。そいつは生きている』


 えっ! マジで!? 俺、生きてんの!?

 目を開けたいけど、力が入らない。


「紫雲さん……」


 やっとの思いで出た声は、何でこんなにか細いのか。

 一日で二回も生死をさ迷った人間なんて、この世に俺くらいだろう。

 目を開け、紫雲さんの顔を見た瞬間、安心したのか、眼から溢れ落ちるモノが。


「良かった。無事とは言えないけど、無事で」

『少年。俺様が助けた命、すぐに失うなよ』


 風吹もいる。良かった、良かった。


「うちの馬鹿兄が、空木君に無理をさせて。本当に、ごめんなさい!」

『俺様からも謝る。すまなかった。ほら、晴斗も謝れ』

「ごめん。俺が、悪かった。実力を見たくて。ごめん」


 紫雲さんのお兄さんは、俺の視界の中にはいない。少し離れた所にいるのだろう。


 それにしても、身体に力が入らない。


「起きたい。でも、力が入らない」

「ちょっと待って。今、手伝うから」


 紫雲さんと風吹に手伝ってもらい、なんとか上体を起こした俺。

 辺りを見渡し、その被害を目の当たりにする。


 壁は四方全てが崩れ、屋根もない。

 体育館のライトが粉々になって、夕日に照らされ、キラキラとしている。


「これでも、少しは時戻しを使った。式神の力は無限じゃないから、私の式神は、今は使えないけど」

『俺様の式神と晴斗の式神で、少しずつだが時戻しをしている。安心しろ』

「霊魔は、どうなった? 皆は? 無事?」


 一番気になること。俺が倒しきれなかった霊魔と、皆の無事が気になって仕方ない。


「霊魔なら、君が意識を失う直前に、自分で倒した。見事だったよ」

「俺が?」

「覚えてないみたいだね。君は、意識を失う直前に、木術(もくじゅつ)の一つ、花舞(かぶ)を使っていたよ」

「全く覚えてない……。です」

「そうか。無理はない。皆のことは、心配ない。地下シェルターに逃げたし、もう下校したよ」


 そっか。皆、無事なんだ。良かった。


「そろそろ、俺も帰らなきゃ。姉ちゃんが心配する」

「その前に怪我の手当てを。馬鹿兄のせいで、空木君が……」

『手当てなら、俺様に任せろ』


 風吹はそう言うと、俺に右手の掌を向け、ブツブツと呪文を唱えている。


「風吹さんは、回復術を使える鬼なの」

『怖がる必要はない。この術は、鬼にのみ与えられた力だ』


 みるみるうちに傷が癒えて、身体に力も入るし、痛いところが無くなっていく。


「馬鹿兄が家まで送るって。今回のお詫びを兼ねて」

「香楽? 俺はそんなこと言ってないぞ?」

「お(にい)は黙って。絶対、送って」

「ありがとう。紫雲さん」

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