第ニ話 六
ヤバいな。これは。紫雲さんと風吹は、教室棟にいる。
二人だって、気配は感じているだろうから、すぐに来るだろう。
あれ? ここに、紫雲さんがいるんだよな? 何者か知らないけれど、紫雲さんがここにいる。
ここが危ない。避難を提案します……。
そんな声が、俺の後ろ近くで聞こえ、俺のすぐ近くに、誰かがしゃがんだ。
「君が、空木朔君。だよね?」
「そうですけど」
その声は、男の人の低い声で、先生ではない様子。
コソコソとその人と話すけれど、気になる事が。なんだか、紫雲さんに似ている気がする。
「俺は、紫雲晴斗。紫雲香楽の兄」
「あ、貴方が、紫雲さんの……」
「そう。今、学校の周りに、十五体近くの霊魔がいる。それで、お願いがあるんだけど」
「何ですか?」
「一時的に、君に五行術を使えるようにする。いきなり実戦で申し訳ないけど、俺たちだけでは手が足りないんだ」
「でも、戦い方なんて、知りませんよ?」
「狩猟ゲームとか、RPG系、バトロワ系のゲーム、やったことない? あと、サバゲーとか」
まさかのゲーム?! え、何、この人、霊魔との対峙を、ゲームだと思っているのか?!
「バトロワ。バトロワ系なら、やったことありますよ」
「それなら、動きは大体分かるよね。それで良いから。あとは、徐々にね」
どんどん嫌な気配が近づいてくる。
気がつくと、この体育館に残っているのは、俺と紫雲さんのお兄さんだけ。
「君の色々は、紙人形に写した。皆、地下に避難したから大丈夫」
「俺、道具がありません」
「香楽から連絡貰ってる。これを使うと良い。俺のお古で申し訳ない」
「いえ。ありがとうございます」
「じゃ、手を出して」
何をするつもりだろう。
不審に思いながらも、恐る恐る、右手を出した。
「この護符を持っている間、君は五行術を使える。一時的なものだから、日が暮れると効果が切れる」
「分かりました。扇は、閉じて使うんですか?」
パリーン! ガシャン!
『フルードゥー! ギギャァ!』
『ギギャァギギャァギギャァ!』
ニ体も、いきなり来るのかよ! もう少し、心の準備をしたかったのに!
「さぁ、実戦といこうか! 君の才能を見せてもらうよ!」
なんだか、ノリノリな紫雲さんのお兄さん。
一時的に五行術が使える俺の、才能を見るなんて、おかしい。
『フルードゥー!』
俺の前に現れた、大きな霊魔。嫌な気を放っているから、今すぐにでも、逃げたい。術を知らないのに、使えるわけない。
「君は、術を知っている。その護符がある限り、術を使えるよ! 空木朔君!」
紫雲さんのお兄さんは次々と技を放ち、一体を簡単に消滅させた。
俺だって、術師になりたいと思ったんだ。これから、出来ないなんて、言えなくなる。
やるしかない!




