表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紫雲のカグラ  作者: 天城なぎさ
第二話 夢幻の世界
14/102

第ニ話 四

「んっ……」


 暗い所から一気に明るい所へ。

 目が明るさに慣れていないから、少し待つことに。


 はっきりと見えるようになった景色は、辺り一面(もや)か霧で、真っ白な世界。足元を見て見ると、フワフワな感触で、真っ白だ。


「紫雲さん、聞こえる?」


 いくら待っても、返事がない。


 きっと、霊魔と戦っているんだ。

 俺に構わず、戦闘に集中して欲しい。


『ギギャァ!』


 気がつかなかった。ギョロ目で口が裂けている霊魔が、目の前に現れた。


 どうする。どうするどうする。

 俺はまだ術を使えない。逃げても、この世界が何処まで広がっているのか分からないし、霊魔に追いつかれたら、待っているのは……。


 あー、もう! 考えている余裕なんてない。


 動くしかないじゃないか!


「ぐあっ!」


 一瞬の隙をつかれた。俺の首を、片手で絞めようとしている。


「は、なし、やがれ……」


 霊魔が強く絞めてくるせいで、息が出来ない。


「ぁぐゎ……」


 手足を動かそうにも、力が入らないし、息が出来ないから意識が……。

 やべぇ。これ、幻覚の中で死ぬやつじゃん。


『無力とは、時として、自らの命を犠牲にする。助けてやっても良いのだぞ? 少年』


 この声は、トンネルの中で会った、あいつか。でも、振り向けないし、顔を見ていないから、よく分からない。


 ヤバい。意識が完全に……。


「ぁぁくっ……」


 か細く出た声は、声と呼ぶには程遠いものだった。

 きっと姉ちゃんも、こんな感じだったのだろう。苦しかったんだろう。

 術師になりたいと、姉ちゃんに話した時、約束したこと。それは、姉ちゃんよりも先に死なない。


『やれやれ。助けてやろう』


 その声が聞こえた時、俺の意識は、遥か彼方へ飛んでいたのだった。


 ***


「空木君! 大丈夫?!」


 聞き慣れた声に、俺の意識は引き戻された。そんな気がする。


「紫雲さん……?」


 冷たい地面に横たわって、真っ白な空を見上げる俺の顔を、心配そうに、覗き込む紫雲さん。


「良かった。霊魔に首を絞められて、意識がないって、風吹(ふぶき)さんから聞いたの」

「ふぶきって、誰?」

「あっ、もしかして、名前を名乗らなかったの?」

「誰の事?」


『ふぶき』と名乗る人物に、会った事はない。もしかしたら、会っているのかもしれないけれど、記憶にない。


『俺様の事だ。少年』


 トンネルで出会ったあいつが、俺の顔を覗き込んできた。

 薄暗くて、顔を見ていなかったが、よく見ると、額の辺りに(つの)が二本。

 人間と同じ皮膚の色で、角以外は全て人間。


「お前が、ふぶきなのか?」

『そうだ。驚いたか? 風が吹くと書いて、ふぶきだ』

「鬼だよな?」

『鬼が、霊魔を退治してはいけないのか?』

「ただ、紫雲さんが鬼と繋がりがあることに、俺は驚いている」

「まぁ、驚くよね。起き上がれる? ここから出よう」


 紫雲さんと風吹が手伝ってくれて。と言うより、半ば無理矢理、風吹に背負われ、濃霧の中を進んで行く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ