第一話 うさぎ
一人、旅をするものがあった。旅の目的はない。今はただ、次の街を目指すばかりであるようだ。
そのものは、旅の道中に『完璧な立方体』を見つけた。これが何かは分からない。しかし巷では、謎めいた物体がそれなりに高値で売れるのだ。故に彼は街を目指しているのである。
一方、とある街『テック』では自称考古学者の青年がいた。その青年の名は『ラーズロ』変人である。ラーズロの親は、地主でありそれなりの金持ちであった。三年前にその親が死に、遺産をすべてを古代遺跡やらの研究につぎ込んでいた。そして三年で遺産は底をつきかけていた。いよいよまずいぞ、と思い立ちラーズロは、ぎりぎりの遺産を割いて占いをしてもらった。(彼は働いたことがないので占いなどにすがるほかないのだ)占いの結果はこうであった。
【しかくのうさぎながれにしたがえ】
であった。【しかく】とは、なにか。【うさぎ】とは、なにか。【ながれ】とは、なにか。考えを巡らせている内に彼は、いよいよ何もわからず、二か月経った。遺産は、残すところ一週間分の生活費しか残っていない。
そんなある日、珍しい客人が訪ねてきた。そのものは人ではなかった。動物でもなかった。この地域には生息していないはずのいわゆる『獣人』であった。見た目は『人型の【うさぎ】』と表すのが妥当である。さらにそのものは【しかく】を持っていた。まごうことなき『完璧な立方体』であった。ラーズロは、喜々としてこう言った。
「君を、待っていた」
そのものはこう言った
「え」