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ニューゲームはハードモード  作者: 笹葉きなこ
第一章 風の神殿
9/12

野宿

 日が沈み、空は夕焼けと夜空に染まってきた。

 私達は慌てて歩みのペースを上げるが、所詮は徒歩による移動。しかも土地勘もないもんだから結局大して進めず仕舞いだった。

 ゲーム内ではマップをいつでも確認できるし、マップを確認したら自分の場所も分かる。これが如何にありがたい仕様だったのかを理解した。そもそもアナログな地図で自分の場所が分かるシステムっておかしな話だよね。今でこそスマホで簡単に確認できるけど、昔の人はこれと同じ様に自分の位置を簡単に把握できない状態で移動をしてたんだからすごいよなぁ。

 私の頭の中にはハンターの特徴からか、地図がどんどん出来上がっていくけど、目的地までの距離がわからない直線移動だと全然役に立たない。こんなことなら地図も買っておけばよかった。買う人もいるんだね……。


 今は恋しい、そんな現代技術に思いを馳せながら、私たちは草原を駆け抜ける。段々と道中で遭遇するモンスターも夜行性のものが増えて来て、黒っぽい生き物が増えて来た。昼間に戦闘経験を積み続けたから苦戦と言う苦戦はしていないけど、完全に真っ暗になったら危ない気がする。どうにか完全に日が暮れる前に泊まれる場所を確保したい。

 辺りを見回しながら移動を続けると、遠くで煙が上がっているのを見つける。


「あっ、あんなところに人がいる!」

「えーっと……、よくあんなの見えるな、ナナ」

「俺全然見えないんだけど」

「私、天才だから」

「でも天才なナナ様でも準備忘れることあるんだな」


 このやり取りをやれやれといった風に見守る川田君。

 私たちの足取りは打って変わって軽くなる。さっきまでは無事に明日を迎えられるかわからない状態だったのに、何とかなる兆しが見えて来た。



「すみませーん」


 私達は悪意がないことを示すように両手を上げながら、焚火をしている人の方に近づく。先頭を歩くのは川田君。今日は役に立てなかったから、と話をする役を買って出てくれた。まぁ私が話すよりもスムーズに事を進めてくれそう、仮にも陽キャの塊みたいな人間だから。


 この世界に来てから、いや来る前から分かっていたことだけど、彼は知らない人ともスムーズにコミュニケーションをとる能力が高い。ハウトと打ち解けるまでも早かったし、なんだかんだリズのお母さんの心配も一番に口にしていた。こういうのが世間を渡っていくのに必要な能力なんだろうなぁなあんて思いながら、彼のやり取りを見る。


 最初は少し怪しまれていたように見えていたのに、途中で肩を組んで笑いあう仲になっていた。……そんなに仲良くなる時間あったか?


「いやー災難だったな、兄ちゃんたち」

「でもパンシさんのおかげで助かりましたー」


 肩を組みながらこっちに歩いてくる二人は満面の笑みを浮かべている。パンシさんと呼ばれたおじさんの片手には、昼間に狩った魔物の肉が握られている。懐柔かお礼か、真意はどちらかわからないが、有効な贈り物であったに違いない。


「ほれ、二人もこっちに来な。夜は冷えるからな」

「あ、はい。ありがとうございます」


 パンシさんに連れられ、焚火の近くに進む。火の周りは整えられていて、腰を掛ける用の丸太が用意されている。……丸太? こんなものどこから。怪訝に思っているのが顔に出たのか。パンシさんが説明を始める。


「これは家の近くでとれる丸太だ。俺は木こりをやってるもんでな。木の収納はできるんでい」

「へー、そうなんですか」

「職業によって収納しやすい道具も変わるんは知っといたら便利かもしれないな。アンタら冒険者やろ」


 また新しい生活の知恵が出て来た。どうやらこの世界では職業によってアイテムの持ちやすさが変わるらしい。収納バッグの容量の取り方が変わるのかな。

 バッグと言えば、冒険者のバッグも内容量は無限じゃないような気がしてきた。流石に無限に入るバッグがあれば収納のしやすさとか気にする必要がないしね。まぁ沢山いれても整理が大変そうだし、適度に整理をしておいた方がよさそう。川田君とかペンダント探すのに苦労してたし、……肝心のペンダントはなかったけど。


 私達は、焚火で魔物肉をあぶって食べながら時間を過ごす。辺りは完全に日が暮れて気温が下がり、空にはきれいな星が瞬いている。……が時々星を隠すように大型のモンスターが飛んでいる。綺麗と言い切るにはあまりにも物騒な夜空だな。


 そんなことを考えながら、夜を明かしたのだった。


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