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ニューゲームはハードモード  作者: 笹葉きなこ
第一章 風の神殿
8/12

大陸縦断の旅へ

 クストの村から帰ってくるステラと合流した私たちは、クリスタルゴーレムの生息しているクリスト山へと向かう。


「クリスト山までどれくらいかかるんだ?」


 ゲームをやっていない川田君が私たちに質問をする。

 七色の橋のゲーム内では、ベグニの街は大陸の南端、クリスト山は大陸の北端にある。大陸の端から端まで移動しようと思ったらゲーム内では30分くらいかかる。ベグニの街からクストの村までの移動時間はゲーム内で30秒、歩いて移動したら30分だったのでだいたい60倍くらいなのかな。となると、30時間もあればつくんじゃないかな、なんて考える。

 初めて移動するときは大変だったけど、ゲーム後半になれば移動が便利になるから陸路を通ることはほとんどなくなるので気にしていなかった。

 そんなゲームの思い出に浸りながら、楽観的な思考でいる私の耳にステラの言葉が入ってくる。


「大陸の縦断だからな、ざっと1ヶ月くらいじゃないか」

「え、そんなに掛かるんだ」

「むしろこれでも短く見積もってる方じゃないか。一般人が移動しようと思ったら大金使ってこれくらいの時間だろ」


 ステラに何を言っているんだコイツ、という目で見られてしまう。ベグニとクストの縮尺からかなり楽観的に考えていたけども、現実はそんなに甘くはない様だった。


「夜に移動なんて出来やしないからな、早めに宿をとることを考えたら一日に移動できる距離なんてそんなもんだ」

「あー、そうだね」


 ゲームのキャラクターたちは夜通し歩いても何も問題がなかった。冷静に考えるととんでもないことだ。夜通し飲まず食わずで、それどころかずっと飲まず食わずでマップ探索をしても何も問題がない。改めてゲームの世界に入ってからゲームの特性を理解した。安直にゲームの世界に入りたいだなんて考えるんじゃなかった。

 後悔先に立たず、これからの苦労にため息が出てしまう。


「そんな暗い顔すんなって、きっと楽しいからさ」


 何も考えずに能天気に言い切る川田君の様子を見て、なおのことため息をつきたくなる。

 全く、誰のせいでこんなことになってるのか。口からこぼれそうになった言葉を飲み込み、そうだね、と適当に返す。縦


 草原を歩くこと30分ほど、辺りを見回してもどこまでも続く草原しか目に入らない。なるほど、これだけ広ければ大陸の縦断に1ヶ月はかかるというのも納得できる。路銀を稼ぐ、という意味を込めてなるべく積極的にラビィを狩っている私たちの歩みがこの世界の一般の人の歩みと比べて早いのか遅いのかはよくわからないけど、時間が危なくなったらきっとステラが急ぐように言ってくれるでしょ。


 世界の住人がいる、という事で全部任せっきりにしていた私だったけど、日が暮れ始めた頃にその考えが甘かったことが発覚した。


「ねぇステラ、次の街まであとどれくらい?」

「え、ナナが把握してたんじゃないのか?」

「えっ?」


 どうやら、私もステラもお互いが距離を把握していると思っていたようで、全然時間、距離の管理ができていなかった。


「最悪、野宿でもすりゃいいか」


 流石生命力の逞しいステラ。簡単に野宿の提案をしてくる。


「かな。野宿の準備はできてるの?」

「は? お前ら何の準備もしないで旅に出てんのか?」


 ステラに至極まっとうなツッコミを入れられる。

 ……まさか初日から野宿になるだなんて考えもしていなかった私は何の準備もしていない。ある程度の回復アイテムと、川田君の装備を整えたくらいだ。

 隣では野宿なんて初めてだ、とワクワクしている川田君がいるけど、残念ながらなんの準備もしていないからそんなことはできない。


「ステラは? なんか準備してないの?」

「アタシは、あんたらが準備してるって思ったからなんも準備してないぜ」

「えぇ……」


 詰まるところ、誰一人として準備ができていない、かなりやばい状態になってしまっているらしい。

 大陸縦断の旅初日にして、かなりやばいことになっているようだ。

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