第6話 グイアル西検問所
と言う分けで俺はウェント王国王都、カルフテルに到着した。
ちなみに、この王都カリフテルの名前の由来は、過去の英雄カリフテル・ハダルから付けられたそうだ。
カルリテルが伝わっていくうちに、カリフテルを間違ってカルフテルと訳してしまったことがあり、そのままカルフテルとなったそうだがそのままになっているらしい。前にも一度英雄の名前を汚す気かと戦争になったそうだが、結果はもうどうでもよくなって戦争は終結。そのまま誤訳の名前で王都の名前が付けられたそうだ。
まだ世界観は掴めてはいないが、恐らく文明レベルは元の世界で言うところの中世に近い。
まず俺は、検問所で審査を受けてから王都へ入ろうとしていた。
検問所には、列ができていてアーチを潜り抜けた所に兵士らしき鎧の男が立っていた。
検問官だろうか?
「はい。次、そこのお前たち!」
いきなり声を掛けられ、シルフィ―は暗い顔をして透かさずフードを被る。
「っはい!なんでしょう」
とっさのことで反射的に答える。
「どこから来た?身分証の提示をしろ。武器は持っているか?」
やばい。これ何も持ってないと、怪しまれるよなあ。
「えーっと。出身地は日本です。武器なんて持ってないです!」
「聞いたことないな。それで、身分は?」
「えーっとそれは・・・」
俺が他に考えが思いつかず、迷っていたら隣でシルフィ―が言う。
「この人の身分は、私が保証します!」
「シルフィ―・・・」
それを聞いた検問官が、顔をしかめて言う。
「根拠はなんだ?確かに名目ではダンジョンの周辺調査と、魔鉱石の回収だが」
「それに貴方たちだって、この魔鉱石が収入の一部でしょう?だったらこの国に利益をもたらす冒険者を入れないわけには行かないでしょう?」
「確かにそうだが・・・」
「この人はワイバーンに襲われているのを私が保護したんです」
「ワイバーン?今は、活動期ではないだろう?」
「でもいたんです」
あれ?でも確かに襲われたはずだが。
「まじであれは、やばかったです」
検問官も、困った様子だった。
「ワイバーンが現れたら、調査報告書に載るだろ。しかも活動期ではないし・・・」
そう言いかけたが、急に検問官の、顔色が変わる。
「まさか、最近王都で話題になってる。ダンジョンか何かか?」
「ダンジョン?」
確か、ゲームとかにある奴だよな。
「確か、古代の遺跡よね」
「ああ、そうだ。最近それが突如エヘイルヴ高原の方で、出現したらしいんだ」
いや、突如出現てなんだ?もう話について行けない。
「それが、魔王復活とかいう噂で持ち切りだよ」
その魔王ってのが気になる。
「それが、生態系を崩してるとかだとさ」
「ふーん。魔素だまりでもあるのかしら?」
「さあな。所であんた、何でフードをかぶってるんだ?」
彼女は、よほど自分を気にしているのか、少し黙ると言った。
「貴方は、エルフは嫌い?」
検問官は明らかな嫌悪を剥き出しにして言った。
「そりゃあそうさ。何でそんなこと聞くんだ?奴らはこの国に逆らったからいけないんだよ」
その答えを聞くなり彼女は、そう。とだけ答えて、曇った顔を浮かべた。
呆れた。
「おい、アンタ。何もそんなに言う必要はないだろ!」
「亜人は、人間様にこき使われればいいのさ」
なるほど。人間至上主義か、だからエルフは暮らしにくいのか。
「この国では、亜人は奴隷みたいなもんだからな。なんでそんなにエルフに味方するんだ?」
そう言うと検問官は眉間にしわを寄せて、
「まさか、お前エルフか?この国を汚すんじゃねえよ。お前らは大人しく壊れた里に帰ってろ!」
検問官が罵倒を飛ばすと、勢いよく被っていたフードを外し、彼女は冷静に答える。
「そうよ、私はエルフ。私のことは何を言ってもいいけど、里の皆を悪く言うのはやめてだから・・・」
「ならこの街に入れることはできねえな」
検問官は、さっきまでとは態度が急変した。
「おいそれはひどいだろ。どうして一人の女の子傷つけて恥ずかしくないのかよ!」
「ああ!お前も同罪だ。この国で働かせるわけには行かない」
「冒険者の成り手が減っているなら取り入れた方がいいはず、政権交代後どんどん減っているはずよ?」
なるほど、冒険者の成り手がいないとなると王国は異邦人でも取り入れた方がというのは打開策か。
だが、エルフはダメってか?何様のつもりだよ!確かに地球でも似たような差別や偏見はあるし、
歴史に刻み込まれている。この世界でも同じことはあるということだ。
内心、かなり怒ってた。
「黙れ!これ以上言うと王国の反逆罪になるぞ」
そこに、騒ぎを聞きつけた一人の四十代後半くらいのおじさんがやってきた。
「何をしておるのかの?」
「どっドヴェンス西検問長!一体なぜここに?」
検問官が焦った様子で、此方をチラチラと見る。
「また、何か騒ぎを起こしたのかと思ってな」
「とっとんでもない。そんなことありませんよ!」
「そうかのう。また亜人をつまみ出そうとしているのかとおもってな?」
図星を突かれた検問官はその場で俯く。
「確かに、お前の亜人に対する偏見は分かる。ここに配属する前、お前の両親は亜人に殺されたんだってな。ケルファン君」
ここで初めて検問官の名前を聞いた。
ケルファンとか言ったか、そいつは何も言わないでずっと黙っている。
ドヴェンスが続けた。
「だが、それはこの人達には関係なかろう?お前の独断で悪いと決めつけるな。こっちだって亜人を沢山殺して、このウェアントはその穢れた歴史の上に成りあがった国なのだよ」
「しかし・・・」
そこで奴は初めて口を開いた。
「お前も分かっているな!!!」
本気で亜人を憎んでいた検問官を一瞬にして黙らせる。それなりの信用と影響力を持っていないと、並の人間にできる事ではない。
「はい・・・・」
ドヴェンスはこちらを向き、謝罪する。
「すまないな、私の部下が迷惑をかけた。こいつも反省しているからどうか今回は勘弁してやってくれないか?」
「分かりました。私たちをこの街に入れてください」
この人凄いな。偏見もなくてまさに理想の上司像という感じで、この国にもそう言う人がいてくれてよかったと思った。
「見たところ、武器もないし、変な恰好をしているけど今回は、入国を、許してやる。もう行け!」ふてぶてしくケルファンが言うと、街に入ることを許された。
昔から俺は、あまり差別や偏見は好きではない。
人間は、自分を優位にするためにここまで偏見がひどいとはエルフだかっらて相手は女の子だぞ!
これ以上彼女の悲しむ姿は見たくないし、何とも言えない、複雑な感情だった。俺は王都の、都市へと出た。
悲しそうな彼女に俺は言う。
「俺はエルフだかっらて嫌ったりはしないよ。俺は見方だ」
彼女は苦笑いを浮かべながら、素っ気ない態度をとる。
「貴方には関係無いことよ、もう行きましょ」
俺たちはその場を離れた。