第3話 見たこともない世界
此処は・・・
何処だ?
意識はなく、ただポコポコと気泡が弾けるような音が繰り返し耳の中で響いた。
微睡中で俺の意識は、覚醒する。
目覚めるとそこは、小高い丘の上だった。
「え・・・・」
俺はジャージ一丁でそこに突っ立ていた。視界が段々と明るくなり、周囲を見渡せば、木が生い茂っていて、空は紺青色で。空気も透き通っている。
ふと上に視線をやった。俺の黒瞳に一番に映ったのは、紺青の空の上、とにかく巨大で薄花色の土星の様な、リングを纏ったガス惑星が浮かんでいた。例えるなら、『青い土星』とでも言うべきか。
『青い土星』の方が実質的には近く、目立つがこの世界を照らす存在がある。お馴染みの太陽に該当する存在は無いが、太陽のような明るい恒星が眩い光を発していた。だが、普段見る太陽よりも更に赤みが増す。
まだ意識がハッキリしない中、視界をもとに戻すと、少し遠くの方に視点をやれば、大きな山脈が連なり、山頂は銀嶺。森の方には美しい滝が流れ、湖を形成している。
ハッキリとは見えないが、見たこともない鳥でもなければ、爬虫類の様な生き物が迂回していた。
山脈の向こうには、遠くから見てもさらに巨大な木が聳え立っている。それはこの世界を象徴するかのように雲をも通り越し、ぐるぐると渦巻くような独特な幹、そして大地を掴むかのように捻れて突き刺さったがっちりした根、複雑に分かれた枝、そのは一つ一つに生命を感じる生い茂った無数の葉の数々。
それは見る者を圧倒する大きさ、巨大すぎて宇宙まで届いているようであった。否、恐らくは宇宙まで届いている。まるで北欧神話に出てくる世界樹ユグドラシルに酷似している。
段々と呼吸が荒くなり、何が起こったのか分からない俺はその場で唖然とした。
「此処は・・・一体何が起きたんだ?」
その行為は無駄にも関わらず、その場に居ないはずの誰かに問いかける。
「俺は……なぜ。さっきまで授業を、受けていたはずだ」
俺は思い出す。確か亀裂に吸い込まれて...思い当たる節を見つけた。もう一度辺りを見渡す。その光景を見て、再度確信する。
「此処は地球じゃない...」
恐らくは物理法則や、生態系も全く異なるものだろう。そうでなければ、あの巨大樹だって、ドラゴンみたいな生物も立ったり飛んだりできないはずだ。
どれもラノベなんかで読んだもののような世界だった。ただし、それは現実のものとなっていた。
「まさかこれって・・・異世界じゃないよな」
もう俺の頭は混乱でしかなく、全てを理解が出来ない
ならばこの世界は、どんな世界でどんな星なのかだ。元々あった知識を総動員して考える。
あの空に浮かぶ星、恐らくはガス惑星だろう。土星を青くしたような星は、空に輪があるのがくっきり見えている。つまり、今ここにいる。この星は、衛星ということが分かった。
紺青の空に浮かぶもう一つの星、一見太陽に見えるが赤い。
この星系は『ハビタブルゾーン』に、ガス惑星がありその周りに今ここの星が回っているのだろう。
ハビタブルゾーンとは、水が個体でも気体でもなく、液体で存在できる距離だと考えてくれればいい。
つまりここは、地球のように生命が暮らす星だったのか。ほかにも衛星がありそうだがそこにも生命がいるのだろうか?そう考えていた俺は、少し落ち着いた。
自分でもわからない驚くほど落ち着いている、普通ならパニックになってもおかしく無いはずだ。
とにかく、ここから離れようとする。俺は丘を下った。
一方その頃、悠久の時を眠る遺跡の下、最下層にて――――不気味な笑みを浮かべる混沌は静かに呟いた。
「やっと来たか」