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79話・あなたの道と私の未来 2

_| ̄|○ ガクッ ラブシーンは苦手。下手ですみません……。

もうすぐENDです。それまでお付き合いください。

 その後、ギルとショーティーの看病の甲斐あってか、すぐに熱が下がって快復した。

 どうも故郷に着いたことで気が抜けて、隠れていた心身の疲労が感冒を呼び込んでしまったらしい。飽きるほど高級宿で静養してたのに、実はずっと気を張っていたみたいだ。

 私が寝込んでいる間ギルはずっとこの家に滞在し、予想外の細やかな気遣いを発揮して看病してくれた。薬を飲む時間になるとそっと起こされ、治療士並みの手際の良さで食事と投薬を与えてくれた。

 私はランプの灯りの下で煌く金の毛先をぼんやり眺めながら、苦しい療養の中に幸せを感じた。

 

 そして、今夜は約束の日だ。

 月の満ち日は、双子の月がショーティーの目みたいに丸くなる。


「双子豆の国から双子の月を眺めるなんて、ちょっと笑っちゃうわよね?」


 海に浮かぶ双子と空に浮かぶ双子。すこしだけ親近感がわく夜。

 月の満ちる夜は、ロンド婆ちゃんの詠唱と踊る影を思い出す。私はそれを子守唄にして、安らかな眠りの世界に浸ったものだ。

 けれど、今夜は安らかどころか張り裂けんばかりの胸の鼓動を抑え、ギルが庭先に用意してくれたカウチに座っている。

 肩に、ふわりとショールが掛けられた。


「寒くはないか?」


 雑草が生い茂っていた庭はいつの間にか手入れされて、小さなティーテーブルとカウチが置かれ、中央でしか販売されていない上品なお酒が用意されていた。

 鈍感で朴念仁と決めつけていたが、看病どころか給仕までそつなくこなす素敵な隊長さんに、私は頷きを返しながら吐息を漏らした。


「ありがとう……。疲れたでしょう? ギルも座って」


 山の中腹に家があるため、視界の半分は黒い森の影に覆われ、あとの半分は月と星が煌く濃紺の夜空が広がっている。

 ギルが隣に座ったのを確かめ、ふたつの透明なグラスに泡の立つ黄金色のお酒を注ぐ。


「改めて、依頼完了と無事の帰国を祝って」

「いろいろあったけれど、任務完遂と全員揃っての帰国を祝って!」


 互いの健闘を称え、グラスを触れ合わせて乾杯する。

 口当たりの良い甘口のお酒は、浮き上がりそうな私の心境にとっても似合いの発泡酒だ。一口飲んで、頬を緩める。

 お祝いのお酒に口も軽くなり、あれこれと旅の思い出を語り合う。任務の裏に関しては、秘密だから詳細はまだ教えられないと言われたけれど、触り程度はちらっと明かしてくれた。

 シーラは死刑を免れ、代わりに一生を獄中で過ごす刑に処せられた。他国の王の前での狼藉は通常なら死刑なのだけれど、今回は囮のような扱いをしたこともあって酌量減刑が認められたらしい。

 そして、私に関わりが一番重い『光の魔法士』ことシルビオ・バルロイは、未だに黙秘を続けているという。このまま黙っていても、騒乱の火付け役をした帝国の間諜ってことで重刑が科せられるだろう。


「何もかもが、トゥーリオ滅亡から続いてるのよねぇ。人の欲って、本当に厄介」

「だが、欲がなければ世の発展はないぞ? 何事も加減を見極めること、そして己を知ることだな」


 己を知る……か。

 双子の月を眺め、月光にすべてを映し出されている想像をする。双子の神は、天から私たちをいつも観ている。


「私……横になっている間に考えたの。どうしてギルに惹かれたのかなって。自覚したのは確かに橋から落とされた私を追いかけて飛び込んでくれた時だけれど、でもその前から気になってた。男の人にはいつも嫌な思いをさせられるばかりだったから、滅多にない親切に勘違いしてるんじゃないかって……何度も自分に言い聞かせて、でもその度にギルが支えてくれてた」

「俺も考えてた。リンカに言われて、一緒にいたいと思うこの衝動は……もしかしたら、フェルデ(あいつ)の想いに()てられているのではないのかと。だが、何をどう考え直しても、一緒にいたいという想いが先に立つ。リンカ……」


 夜空を見上げながら、お酒の力を借りて胸の内を吐露する私に、ギルも低く穏やかな声で、ここ数日の深慮を語ってくれた。

 そして、最後に名を呼ばれて、私は振り返る。


「何?」

「好きだ。死が俺たちを分つまで、そばにいさせてくれ」


 月の光が金の髪をキラキラと光らせ、テーブルの上のランプが薄緑の瞳にいくつもの星を点す。

 私は星の煌きを魅入られたように陶然と見つめ、無意識に、でもとても自然に首を縦に振っていた。

 ああ、きっと今、私の瞳には星の煌きが降り注いでいるだろう。

 近づいてくる薄緑の宝石を名残惜しく思いながら、私はそっと目を閉じた。



 ギル、私のどこが好き?

 ちんちくりんで地味顔よ?

 同じ民族だというのに、なんでアーヤさんやレンカみたいな美人に生まれなかったんだろう。トゥーリオの血だからって言い訳は、もう通らなくなってしまったじゃないのー。

 ねぇ、ギル。

 それに、私は気が強いわよ? 苛め抜かれてきたから、頑張って強くなったの。

 可愛げまでないって、女としては失格かな?

 そんな私でもいいの?

 

 あなたの感情が思い違いだったとしても、私はずっと好きでいる。

 ギルバート、好きよ。


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