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33話・魔女の本音 猟犬の内心 3

ここでストックが尽きました。

また書き溜めますので、明日は更新がありません。


次からは旅ですよー。旅情編ですよ。

 信頼までには足りないけれど、信用できる護衛がついてくる。たとえ、いらないと断っても彼らは任務としてついてくるだろう。

 それならたっぷり有効活用させて頂こう。シーラの件の貸しを返してもらうんだと思えば、ちょっとは気持ちも楽だ。それでなくても、互いに思惑あってのことだ。

 私は母の軌跡を見つけるために。ギルたちは『光の魔法士』を捕らえるために。

 ゆえに、リカルド国王の依頼を受けようと決めた。



 翌日の午後、ギルの護衛を先導に私とシェルク様は再び王城に入った。

 通された部屋は前回とは違い、会見のために設けられた小規模の広間だった。先日通された私室のような古さはあるが、すこしだけ風格と体裁を整えた感じのよそよそしさがある。

 保護局本部襲撃をすませて戻ってきたリカルド国王は、先回よりも乱れた髪に地味な衣装を纏い、大変お疲れの様子で上手から現れた。

 それでもいくらか肩の荷が降りたのか、会見の間に入ってくるなり私を見やって晴れ晴れとした笑みを浮かべた。

 厳つい顔の中で大きめの唇がぐいっと引き上がり、一重の金環眼が細まると、途端に人好きのする王様に変わる。


「受けてくれる気になったか!」


 リカルド国王はとても率直な明るい声を発すると、私の前に据えられた簡易の玉座に座った。

 私は一礼し、一段下がった位置に用意された椅子に戻った。


「はい。ご依頼を受けておきながら、長々とお気を煩わせてしまい申しわけございません」

「いや、稀なる異名持ちとはいえ婦女子の身だ。職絡みならいざ知らず、この依頼は言わば戦士や傭兵に依頼するのが道理だろう。それをそなたに頼むのだ。ゆっくりとは言えんが、長考されても仕方ないこと。心より礼を言う」


 リカルド国王はそう言い放つなり立ち上がり、私の前に降りてきて手を取ると熱い両手で握り締めてきた。

 私は瞠目しながらも立ち上がり、そのままの姿勢で軽く膝を折って礼を返す。


「そなたには辛い依頼になるやも知れんが……真に感謝する。何でも要求してくれ。できるかぎりの支援をしよう」


 相変わらず飾り気のない人柄だわと感慨深く感じながら、私はようやく強張りを解いて微笑を返した。


「ひとつお聞きしてもよろしいでしょうか?」

「なんなりと申せ」

「アーデルベルトの軍人数名が私の護衛に就くのですが、彼らはこの依頼内容を知っているのでしょうか?」


 任務とギルは言っていたが、誰が下した命令かまでは確認し忘れていた。軍部のお偉いさんはギル側ではなく身柄拘束対象だったはずだから、アーデルベルトを発つ前か、こちらに先乗りしていた関係者かと思っていたのだけれど、もしかしたらリカルド国王からとも考えられた。

 それというのも、昨日の東屋での三者会談で、シェルク様はギルたちをけん制することも私に口止めすることもしなかったからだ。

 内密の依頼なら、当然アーデルベルト側の軍人など排除して、カルミア側から護衛をだそうと提案するだろう。

 私の問いに、リカルド国王は悪戯な子供のようにニヤリと笑う。


「荷物を所定の場所へ届けてもらうとは話してある。ただし、運ぶのは『翠の魔女』殿でなければならず、道中は危険が伴うともな。荷物が何であるか、異名がどのように関係しておるかなどは話してはおらん。なぁ? シェルク」

「ええ、ギルバート殿は信用できるにしても、他の者はどうか判りませんでしたので」


 私はその答えに頷き、リカルド国王の目を見据えた。


「では、陛下の信頼がおける案内人をひとり貸していただきたいのですが。できれば……自分の身は自分で守れて地理や地域的事情に詳しい女性を」

「案内はつけるつもりであったが、女で……良いのか?」

「私は、カルミア王国に赴く際、こちらの知識しか頭に入れてきませんでした。それに、腕自慢の護衛たちはいますが、宿の部屋まで入れるわけにはゆきませんから」

「なるほどな。理解した。それ相応の者を選んでおこう」

「あ、条件にもうひとつ追加を。色々な意味で、あまり刺激的ではない女性にしてください」


 私が付け加えた女性同行者の条件を聞いた国王とシェルク様は、一拍置いた後に顔を見あわせて大笑いし始めた。

 主従揃って笑い上戸なのには参る。リカルド国王の脇に立つ近衛の騎士様まで、肩先を震わせ噴き出すのを堪えているし!


「『翠の魔女』殿は案外茶目っ気があるようだな。これはシェルクが気に入るはずだ。どうだ、事を終えたらカルミアに嫁にこんか? 息子が五人ほどおるゆえ、好きな――」

「陛下、それはなりません。我が妹同然の大事なリンカを王族になどに――」


 何を言ってるんだ。この笑い上戸のおじさんたちは!

 年寄りだ何だといいながら、私を妹だってぇ!? 王子の嫁だと!?


「娘にも妹にもなりませんし、どちらにも参りません!」


 また、どっと笑いが増す。

 今度こそ近衛騎士も溜まりかねたのか、背を向けて笑いだしていた。

 あまりの笑い声に、扉の外で警備についていた他の近衛騎士が顔を覗かせて驚いていた。

 その後、依頼報酬に関する契約をすませ、屋敷に戻った頃には夕食の用意がなされていた。

 しかし、三人での夕食はむっつりした私のせいで静かに進められ、妙な雰囲気など無視してずっと不機嫌を通した。

 なんたって、会見の間を出てギルに愚痴ると、「稀代の異名持ちとカルミアの王を骨抜きにするなど、女冥利に尽きるじゃないか」なんてニヤつきながら返してきたからだ!


 早々に部屋に篭って、ベッドの上で大暴れしたのは内緒だ。

 なんか、悔しい。

 なんでだろう。


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