第2話:陽子2
放課後の告白を断った後に陽子は何でも屋と書いてある看板がある門の前に立っていた。
一見すると普通の二世帯住宅なのだが看板があるのでそうなのだろう。インターフォンはあるのだが『依頼のある方は二階からご自由にお入り下さい』と看板に書いてあったので陽子はそのまま門を開けて入っていった。
二階へと続く階段を上りドアの前にたち一つ深呼吸をする。
ガチャ
陽子はドアを開けて中に入った。中に入ってまず陽子が感じたことはシンプルだった。何も無いといっても良いかもしれない。玄関は無く土足で中には入れるようになっていて左の奥に隣の部屋に行けるものだろう。ドアがある。正面にはよく校長室にあるようなテーブルとドア側とその向かい側に黒いソファーが二つ。奥のソファーで男が寝ている。
陽子は少し緊張した面持ちで寝ている男に話しかける。
「すいませーん。ここは何でも屋だと聞いて依頼しに来たんですけど……」
すると男はのそりと起き上がりまだ眠たそうな声で言う。
「ん? あぁ客か……確かにここは何でも屋だ。それで依頼の――…っ!?」
男は陽子を見たとたん大きく目を見開いて固まっている。
「どうしたんですか?」
陽子は自分の格好に不安になりつつも取り敢えず聞いてみる。すると男は
「優!?」
と、知らない人の名前を口にしだした。
「はい? 優って誰ですか? 私は天音 陽子って言う名前があるんですけど。いきなり失礼な人ですねー」
陽子は初対面の男からいきなり知らない人に間違えられ不機嫌になる。
「あぁ、すまん。人違いだった。後、そこら辺に座ってくれ」
男は最初こそ驚いていなものの、今は最初からそんなことが無かったと思わせるくらいさらりと言う。
陽子はそんな男の態度に腹をたてつつソファーに座り、向かい側に座っている男を観察する。
灰色の髪に蒼い目。変わってはいるけど間違いなく美形の分類だろう。しかし恐らくく無愛想。けれど――
陽子がそんなことを考えていると男は更に話しかける。
「それで、依頼ってのは?」
陽子は、はっと我に帰りその後すぐに
「はい、依頼は私をストーカーから守ってください。後、ついでに彼氏役になって下さい」
と、依頼内容を言う。男は怪訝な顔をしながら聞き返す。
「ん? もう一度いってくれ」
「だからストーカーから――」
「そこじゃない次だ」
「あぁ、彼氏役になって下さい」
「………………」
男はしばらくの間口に手をあてて、ふむと少しうなずくと陽子に問いかける。
「依頼内容は理解した。しかしストーカーなら警察に連絡をした方が良いんじゃないか? それに彼氏も学校で見つけ方が早い」
「ストーカーって言っても視線を感じるとか足音がつけて来るとかその程度なんですよ……それじゃあ今いち警察も相手にしてくれなくて。でもやっぱり不安じゃないですか!? 後、彼氏の方は嘘でいいんですよ。学校でそんなこと言って本気にされても困るし」
「それはわからないぞ? 俺だって一応男だ。変な気を起こすかもしれない」
「そうですかね? そんな気のある人は先ずそんなこと言いませんよ? それにええと……」
「あぁ名前か? 藤野 人和だ」
「ええと藤野さん。あ、私も名前を言っていませんでしたね。私は――」
「ああ、それはいい。さっき聞いたから。それで、俺がどうしたんだ?」
陽子はむうと少し頬を膨らませ、また話始める。
「藤野さんは無愛想でそんな人には見えません。それに……安心できる……って言うか……懐かしいって言うか……の……だって……言うか……」
陽子は少し顔を赤らめうつむき加減で言う。
「ん? 後半の方がよく聞き取れなかったんだが」
男はそんなことは気づかず相変わらずの無表情で言う。
「な、なんでもありません!! き、気にしないで下さい」
陽子は慌てて言う。
「そうか、ならいい。それじゃあ依頼の詳細を聞こう。取り敢えずストーカーの事から」
「えっとですね……」
陽子はストーカーの事についての説明をする。
「成る程……ストーカーは二週間前からでストーカーと言っても視線を感じるとかつけられてるとかで実際に姿は見てない。でも、それなら学校の送り迎えだけでいいよな? 彼氏役はいらないだろ」
「彼氏役はまた別件なんですよ。私何故か知らないんですけど告白とかラブレターが妙に多いんですよ。で、毎日毎日昼休みとか放課後大変なんですよね」
「ああ、納得だ。その容姿ならあり得なくは無い」
男は肯定する。しかし陽子は
「??? 何故この容姿なら納得なんですか?」
と、いまいちわかっていない。
男はため息を一つつき質問を続ける。
「まぁそんなことはどうでもいい。それで期間はどれくらいにする?」
「え? あ、えっと…ストーカーと告白して来る人がいなくなるまで?」
「何故俺に聞く? それにそういう期間がわからない依頼は期間の長さによって金額がかなり変わるぞ?」
「ですよね……それはどれくらい違うんですか?」
「まぁ護衛の方は行き帰りを合わせて1ヶ月――。彼氏役の方は1ヶ月――だ」
「え? そんなにするんですか……」
陽子はこの金額に愕然するしか無かった。