表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

第1話:陽子1

 

「ごめんなさい」


 陽子は何度目かもわからない告白を断り屋上でぼーぜんとした男子生徒を後目に教室に戻る。教室に戻り自分の席に着くとため息を一つはいた。

 この学校にはいってはや一年。陽子は入学当初からその容姿故に告白をされたり、ラブレターを貰ったりする事が多かった。それでも去年は一番上の学年に学園のアイドル的存在な人がいたため人気ではあったがそこまで目立つものでもなかった。 しかし学園のアイドルが卒業した今年、陽子に注目が集まり人気が一気に急上昇。これにより告白、ラブレターの数が更に多くなったのである。

 陽子が憂鬱な気分に浸り、机の上でうつ伏せになっていると前の席からクスクスと笑い声が聞こえてきた。


「なによ」


 陽子はムッとした表情で顔を上げるとセミロングの女子生徒が口に手を当てて笑っていた。


「いやー相変わらず陽子はモテモテだね―。一体何人の男が陽子の前に散っていったことか。

お約束の長い黒髪、この世のものとは思えないほど綺麗な緋色の目、そこから繰り出される天使のような微笑み。一体誰がこの女をおとせるのでしょう!?」


と、からかう口調で話す。


「全く茉莉(まり)は他人事なんだから……私はねぇこんなどっかの漫画みたいな生活望んでなかったわよ。何て言うか普通に勉強して、普通に恋をして、普通に学校生活を送りたかったわよ」


 陽子はぶすっとした顔で言い返す。


「それに……あの事だって……」

 

 陽子は顔を暗くする。


「あぁ――ストーカーの事ね? でも警察には言ったんでしょ?」


 茉莉の顔も真剣になる。


「つけられてる気がするだけじゃ何とも言えないんだって。私もストーカーの姿は実際には見てないし……」


「うーん、でも足音はついてくるし、視線も感じるんでしょ? それだけで十分だと思うんだけどなぁ」


 茉莉は少し考えるようなしぐさをしてからふいに陽子に話しかける。


「ねぇ、不死身の何でも屋に依頼してみたら?」


「不死身の何でも屋? あぁ、そう言えばそんなのもあったわね。あれでしょ? いつの間にか潰れて、気付くとまた違う場所で再開してるってやつ。しかも五十年以上前からあるのにやっているのはずっと十八歳くらいの男の人っていう。今は町外れにあったわよね確か。でもストーカーからの護衛とかやってくれるのかな?」

 

「うーん、何でも屋って言うんだからやってくれるんじゃない? あ、そうだ! ついでに彼氏役でもやってもらえば!? それならストーカーからの護衛プラス男達ももう望みがないのを悟って告白ラッシュが終演する。これはまさに一石二鳥!!」


 茉莉はパンと両手を叩き冗談混じりで陽子に提案すると


「茉莉!! それナイスアイディア!!!」


 陽子はそれだ! と言わんばかりの顔である。


「え゛陽子それ本気?」


 茉莉は唖然とした顔で聞き返す。すると陽子は当然といった顔で


「え? だってそうすればストーカーからも守って貰えるし、この訳のわからない告白ラッシュからも解放されるし――」


 陽子は勉強はできる方なのにこういうところが天然なのだ。たまに訳のわからない発言をする。しかも、こういう発言をするときに限って何時もよりも聞く耳を持たなくなる。

 茉莉はそれをわかっているので何処か諦めた感じで


「わかったわ……依頼してきなさい」


「うん!!」


 陽子は満面の笑みを浮かべる。この笑顔が原因で告白絶えずが起きているのを本人は気付いていない。

 まもなく昼休みは終わりを告げようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ