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『へいらっしゃい』
1軒の酒場にひとりの男がおとずれる。
男はそのままカウンターにすわる。
『よう兄ちゃん、何にする?』
酒場のマスターが声をかける。
『……………パトリックとはお前か?』
男がマスターに訪ねると、マスターの目が突然鋭いものへと変わる。
『…………お前何者だ?その名を知っているということは、情報か?』
『………………情報だ。魔族についての』
マスターは目を見開き、酒場のカウンターを力いっぱい叩く。
その音に酒場の客の目がそちらへ集まる。
『……おいおい兄ちゃん。どうして魔族の情報が欲しいのか知らんが、やめておけ。あいつらは関わってはいけない』
『もう十分関わっている。奴らに復讐するためだ。少しでも情報が欲しい。』
『…魔族に恨みがあるやつはお前だけじゃない。そこら辺に5万といる。カンタンに渡せるものじゃぁねぇな』
男はふところからナイフを取り出し、カウンターに刺した。
『…おい、もう一度言う。情報寄越せ。
勿論タダでとは言わない。いくら払えばいい?』
『……威勢がいいのはいいが、後悔すんなよ。
まぁ、50ゲンってとこだ。』
『………………いいだろう。』
『…数日前、東の森で大きな爆発が起こった。国は秘密にしているが、あれは事故ではない。魔族にたちによるものだ。ヤツらが何をしようとしてるのかは俺にもわからないが、魔族の奴らはあの森にしょっちゅう出入りしている。』
『……………ほう。なるほど助かった。』
男はカウンターにコインを置く。
『おい、命知らずな兄ちゃん。最後にお前の名前を聞いてもいいか?』
『…………………………エルヴィス』
男は、エルヴィスと名乗った。
『…ほう、覚えておくよ。生きてたら酒を1杯奢ってやろう』
エルヴィスはニヤリと笑い言った。
『…それは簡単には死ねないな』
エルヴィスはそのまま酒場を出ていった。
『…………エルヴィス、ねぇ。どこかで聞いた名だな』