孤独
長めの話です。
都合により
亀更新なのでご理解お願いします。
影────
僕は影、君を影から守り続ける。
君は僕のことを知らなくていい。
君は前を見て進まなければいけないんだ。
後ろなどを見てはいけない。
後ろを見たら君はまた戻れなくなってしまう。
君の後ろは僕が守るからー───
生き物の焼ける匂い、とても熱い炎────
逃げ惑う人々の声。
『逃げろ!!魔族が来るぞ!』
『お母さん!!お兄ちゃん!』
『逃げろぉぉぉおおお!!』
やける建物、血だらけの死体、──
『人間というのは脆いものだね…』
血だらけの刀を手にした男が炎の道を歩く。
『さて、次はここだね…』
『逃げろ!!エル!!』
『兄ちゃん!僕も一緒に!』
『駄目だ!アーシャを連れて早く!!』
肩に大きな傷を負った青年が少年と少女を後ろで守りながら言う。
その彼の目の前にはひとりの魔族────
『エル……お前がアーシャを守るんだ、僕が時間を稼ぐ!』
『駄目だ………兄ちゃん…』
涙を目に溜めて青年に手を伸ばす。
『エルヴィス!!!!!!!!!』
びくっと少年が肩を揺らしその反動で立ち上がり妹の手を引っ張る。
『っやだ!エルにぃちゃん!イヴにぃが!!』
『アーシャ!!!後ろを見るな!』
2人の少年少女が外へと走り出した。
それを確認し、青年は笑みを浮かべた。
『……いい子だよ、エルヴィス。強くなれ』
その目には寂しさが映っていた。
『へぇー?ヒーローにでもなったつもりなのかい?君』
紅の瞳をした魔族が嘲笑うように言う。
『君はヒーローにはなれないよ。僕がいる限り、ね』
『…最初からヒーローになんてなろうとは思ってませんよ。ただ時間を稼げれば…』
青年は魔族に向かって走り出した…