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爆弾の行方

作者: 久遠

 天高く馬肥ゆる秋。空が高く快晴のこの日に、空港で署長肝いりの爆発物探知犬の訓練が行われていた。

訓練は爆弾を荷物の中に隠し、犬に発見させようという計画だった。

隠された爆弾は4つ。無事に見つけられるか?

「緊急の用事なのだが」と署長が訓練チームの前に現れた。彼は、「緊急報告だ。爆弾の中に起爆装置付きの爆弾を混入してしまったとのこと。爆発の危険性あり。大失態だぞ、慎重に対応せよ」

ざわつく探知犬チームに緊張の色は隠せない。

「事情は分かりました。こちらは見つけ次第報告。それでいいんですね?」

「そうだ。この大失態が公になれば、私の首も寒くなってしまう。何とか内々で処理しろ。下手な事をすれば貴様らの首も無いと思え」

それは、誰が聞いても脅しであった。 

「はい、必ずや無事に回収してみせます」

二人は敬礼をし、その場を後にした。

「さあ、大変な事になったぞ。本物のお宝が混じってやがった。俺たちが見つけて、あの、鼻持ちならない署長の驚く顔をみてやろうぜ」

「おおー!!」

士気は最高潮だ。


 「一つ目の爆弾発見。起爆装置なし」

「良くやった。後、3つだ」

「こちらも発見しました。起爆装置なしです」間を置かずに「起爆装置なしを発見しました」の報も入ってきた。

これで起爆装置なしは全部見つかった。残りは問題の爆弾だけだ。

「あったか?」「いいえ」

無駄な問答が繰り返される。起爆装置つき爆弾の行方は、爆発物探知犬の鼻をもってしても杳として知れなかった。

「困ったなあ。これは荷物が回収されたって事か? そうなったらどこへ送られてしまったんだ?」

「回収した爆弾のあて名は海外ばかりだったな。どこかの国に爆弾を送ってしまってたら国際問題ですよ」

皆の顔が一斉に青ざめる。

「そのあて名は誰が書いたんだ? 書いた人に話を聞かないと」

「書いたのは訓練兵の一人らしいですよ。彼は雑用を押し付けられてましたからね」

「そいつは何処にいるんだ」

「あっちの奥の方でボーっとしてましたよ」

そいつが何かを知っていると確信した面々は訓練兵の確保に向かった。

訓練兵は簡単に見つかった。訓練兵に問いただすと、渋々喋り始めた。

「俺は署長が嫌いだ。毎回毎回雑用ばっかりさせやがって、あて名もお前が適当に書いとけと押し付けて来やがったからジョークで書いてやったんだ。あいつの家の住所をな。でも、起爆装置付きの爆弾が入ってるなんて、まさか配送されてしまうなんて、予想できるわけないじゃないか」

訓練兵はその場に崩れ落ちた。



 大きな家の前に配達のトラックが止まる。

「配達です」配達の青年の声に、扉を開けて壮年の女性が顔を出す。

「あらあら、ご苦労様です」


  

この小説は実際の事件を元にしています。

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