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幼馴染は、もういやだ  作者: 雨霧冬
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疑問

 どうしよう。あれから大地君ずっと無言だ。流石に頬をひっぱたいたのは悪かったかな? そりゃそうだよね。大地君も悪いとはいえ、叩いた方が悪いよね。あーどうしよう。着替え終わったけど、ここから動けないよ。

「そ~言えば、名前なんて言うんだっけ?」

「ひゃっ!?」

「うおっ!? もしかしてまだ着替えてた?」

 びっくりした。さっき私あんなことしたのに、どうして、そんな普通に接することができるの?

「ん? おーい大丈夫? 服は……ちゃんと着替え終わったみたいだね」

「どうして? 私さっき、ひどいこと--」

「ごめん!!」

 私が言い終える前に大地君が遮るように言った。

「あれは俺が全部悪い。調子乗ったごめん。でもさ、一目惚れしたのは本当だから。それだけは絶対!」

「……っ」

 大地君の勢いに驚く。だけど同時にその言葉が本気なのだということを感じる。大地君からの熱を帯びたまっすぐな視線に耐え切れなくなって顔を背ける。

「なあ、そっち向くなよ。俺はこっちにいる」

 言われて、大地君の両手が私の頬を包み、大地君の方に無理矢理顔を向けさせられる。

「……さっきも、言ったけど。私は--」

 再び、大地君の事を好きにはなれないということを言おうと思った。だけどその時、ふいに保健室のドアが開いた。

「ちーちゃん!」

 という声を引き連れて。

「なっ、え、がっく……岳斗君? どうして」

 危ない危ない。人前で『がっくん』と呼びそうになった。本当中学生は面倒くさい。少し男子と話しただけで付き合っているのではないかとすぐ噂されてしまう。愛称で呼ぶなんてもってのほかだ。だから、学校では『がっくん』なんて絶対呼んじゃいけないんだ。

「ちーちゃん。どういう状況?」

 がっくんが疑問の声を上げる。さっきまで愛称の事しか考えていなかったからその言葉の意味が分からなかった。だけど、その意味を考えて、気が付く。私今、大地君の両手で頬を包まれている状況だ。

「ち、ちが、違うの。えと、ほんとに誤解しないで!」

 大地君の両手を思い切り振り払って言った。

「ちーちゃん」

 がっくんは訝しみの目で私を見た。

「……誤解? 何の事? 二人とも仲良いんだねー。ちーちゃんに仲良い男子が僕以外にもいて、良かったよ」

 これは、良かったの? それとも、私が他の男子と仲良くしていてもどうだっていいってことなの?

 複雑な気分だ。

「ちーちゃん、早く教室行こう? もうみんな給食食べ始めてるよ」

 と言ってがっくんは私の手を取り引っ張っていく。その力は見た目以上に強かった。

「岳斗君? 流石に手は……。それに『ちーちゃん』って、呼ぶのは」

「あ、そうだった、分かったよ千鶴ちゃん。でも、手は放してあげない」

 がっくんは意地悪そうな顔をして私を見る。私はもう真っ赤になるしかなかった。

 そういえば一つ疑問がある。がっくんが来てから大地君が一言も話していないことだ。不思議に思って、保健室を出る直前大地君を見た。その顔を見て驚く。大地君はがっくんの事を訝しむような鋭い目つきで見ていたのだ。一体どうしたのだろうか。


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