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幼馴染は、もういやだ  作者: 雨霧冬
4/5

突然すぎる告白

 ズルズルと半分引きずられながら、目的の保健室に着いた。

「せんせー、服汚れた。代えのやつ頂戴」

 元気よく話す大地君に思わず、敬語じゃなきゃダメでしょ、と言いたくなったけれど、ぐっとこらえた。あんまり関わり合いたくなかったからだ。それに先生も気にしたようではなく、おそらく、いつもこういう感じの人なんだろうな。

「あらら、二人とも仲良く服汚しちゃって、何があったのよ」

「まあいろいろあったんだよ、な」

 大地君は私に同意を求める。それに私は頷いた。

「そんなわけで服は?」

「そこの棚に入ってるの勝手にとってちょうだい。ただ、今週中には返すのよ」

 先生は部屋の隅にある棚を指さして言った。

「はーい」

 大地君はそれを聞くや否や返事をしてさっさと棚のある方に移動した。……私の手を引いて。

 先生はそんな私達に目を細めて微笑む。

「仲良いのねぇ、あ、私ちょっとだけ職員室行かなきゃならないから着替え終わったら勝手に出て行ってね。それと、変なことしないでね」

 先生は意味ありげにまた微笑む。変なことって何よ。これでも私はクラスでは優等生の部類に入っているから問題行動なんて起こさないわよ。

 そんなことを思っていたらいつの間にか先生はいなくなっており、部屋にいるのは私と大地君だけとなった。

「なあなあ、変なことするなってさ。人間って、するなって言われたらしたくなっちゃう性質持ってるのにな」

「へえ、そう」

 私はもう何もかも面倒くさくなったので適当に相槌をうった。

「あ~、もしかして俺の言った意味わかってない?」

 意味? 私は何を言えばいいのか分からなくて黙ってしまう。

「わかってないなぁ、これは。つまりこういうこと」

 ふいに大地君は私に息がかかるんじゃないかという近さまで顔を近づかせた。私と大地君の目が数秒だけ見つめ合う。

 ちゅ、というリップ音。遅れて、頬に温かな感触を感じる。思わず頬に手を当てる。

 訳が分からない。今、何が起こったの?

「はは、その顔をおもしろいな。あ、悪口じゃないからね。可愛いっていう意味のおもしろい」

 その言葉で余計に頭が混乱した。というか、おもしろいには面白いっていう意味しかないでしょう。

 とにかく今はどういう状況かを大地君に聞こうとした。だけど、私の心の中を読んだかのように先に口を開く。

「今、頬にキスしたんだよ。キスが何かぐらいは分かるだろ? にしても無防備すぎるだろ、俺がもし口にする気だったらどうしてたんだよ」

 少し微笑む大地君。

 どうするも何も、きっとそれだと素直にされてたでしょうね。だから余計にむかむかとした怒りが込み上げてきた。

「あなたは、好きでもない女子にそんなことするの? 最低!」

 パン

 二人しかいない部屋に乾いた音が鳴り響く。

 気づいた時には、無意識に伸びていた右手が大地君の頬を思い切り叩いていた。

「っ、結構強いね」

 私のフルスイング平手打ちを食らった大地君はそれでも微笑んでいる。だけど、直ぐにまじめな表情になる。

「一つだけ言わせてもらうね? さっき『好きでもない女子に』なんて言ってたよね?」

 もちろん言いましたとも。だってそうでしょう。

 なのに、次に来た言葉があまりにも意外過ぎた。

「俺さ、君に一目惚れした」

 一目、惚れ? うそ、私とは違ってキラキラしているこの人が? 私に?

「そんなわけない。私みたいな地味な子を大地君みたいな人が好きになるわけない」

 がっくんもきっとそうだ。私なんて眼中にすらないだろう。それでも私は頑張ってきた。がっくんと話したいから、学校帰りはわざとゆっくり歩いていつも遅いがっくんを待ってみたりした。でもそれでも、がっくんは私の事何とも思ってない。幼馴染すら好きにさせることのできない私が、こんなキラキラした人を一目惚れさせるほどの力を持ってるわけがない。絶対に。

 そんなことを考えて、また自分で自分が嫌になる。

「君はさ、自分を下に見過ぎていると思うよ? 少なくとも俺は君がすごく可愛い子に見える」

「……そんなわけない。それに、それが本当の事だとしても私は大地君を好きにはなれない」

 私の好きな人はがっくんなのだから。

 私はそれだけ言うと、棚から服を取り出した。そのままカーテンの後ろの大地君から見られない場所に行って着替えを始めた。

 その間大地君はずっと無言でいた。









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