出会い
私は暗い気持ちで歩いていた。そんな時だ。
「そこの子元気ねーな? どんしたんだよ、そんなに服汚れてさ」
誰かに話しかけられた。どう話せばいいか戸惑って、うつむく。
「もしかして誰かに恨まれてかけられたとかか?」
思わずはっと見上げてしまった。目の前には男の子が立っていた。世間でいうところのイケメンだろうか。そんなことを考えてしまった。ばかばか。こんな時に何考えてるんだか。
「まじ? 本当にわざとかけられたの? うわー、古典的ないじめだな。俺が注意してこようか」
「い、いえ。全然平気、です」
また、うつむく。この人は私とは違う。この人もキラキラした人の仲間なんだろうな。きっと私とは相容れない人種。
「何だようつむいちまって、どうせ保健室行くんだろ? ついて行ってやるよ」
「へ、いやいやいや別に大丈夫です! すぐそこなんで」
と言って、一刻も早くこの人の視線から外れるように逃げ走って右に曲がる。そこは廊下が続くかと思ったが下へと続く階段があって、足を踏み外す。
「へ、うそ。落ち――」
落ちると思った。
「うお、あっぶねー」
さっきの男の子が私の傾いた体を片腕でつかみ、宙に浮いていた足を階段の上に降ろした。
心臓がバクバクいっている。今はかろうじて立っているけど気を抜いたら座り込んでしまいそうだ。
「危なかったな。気をつけろよ? つーか保健室左を曲がったところにあるんだけど」
「……へ、へえ~」
そういえば知らなかった。まだ私は中学一年生で中学生になりたてほやほやなのだ。保健室はおろか職員室すらも把握できていない。なんで行くときに気づかなかったのよ。さっきまでどこへと向かっていたんだか。
「ということで見てて危ないんでついて行くよ」
「いや、本当の本当に大丈夫なんで……」
私は男の子を見て絶句した、正確には男の子の服を見て、だが。
その私の視線に気づいた男の子。
「俺の服になんかついて……」
自分の服を見て男の子もまた絶句する。
そこには味噌汁で汚れた服がある。きっと私を助けたときに私の服の汚れがついてしまったのだろう。
「ごめんなさい! 私を助けたばかりに」
とりあえず謝る私。だけど返事は全然来なくて。恐る恐る視線を男の子の顔に向ける。
そこには予想外の表情をしている男の子がいる。にやりと笑っているのだ。
「これで俺も保健室に行く用ができたな。よし、行こう」
男の子は私の腕をつかみ無理矢理引っ張っていく。
なんかやらかした。面倒な子に捕まった。
「あ、そだ。名前言っとかなくちゃだな。俺の名前は古畑大地、よろしくな!」
まるで太陽のような、そんな言葉が似あう笑顔で言う。眩しいなぁ。