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幼馴染は、もういやだ  作者: 雨霧冬
2/5

目の敵

 あ~、終わった。美穂ちゃんに完全に嫌われた。教室にいるのが怖い。

 あの後、とりあえず普通に学校にたどり着いたんだけど。

 私はちらりと教室の隅にある美穂ちゃんの席を見た。数人の女子と話している美穂ちゃんが目に入る。私に見られていることに気づいた美穂ちゃんが私を恐ろしく鋭い目で睨んでくる。慌てて目を逸らす。

 ……女子、怖い。

 同じ女子が言うのもあれだけど。

「あ~怖い怖い。何あの目。千鶴(ちづる)、あいつになんかしたの?」

 そう聞くのは私の親友である酒井千穂(さかいちほ)。サバサバした性格で名前が二人とも『千』から始まっているということをきっかけに仲良くなった。

「朝、がっくんと一緒に居るところ見られた」

「あー、そういうことかぁ。大変だな。ま、でも、もしものことがあればあたしがこの鍛え上げられた拳であいつをぶっ飛ばしてやるから安心しな」

 胸の奥がジワリと温かくなる。

「うん。ありがとう」

 でも本当に美穂ちゃんをどうやって対処すればいいんだろう。

 美穂ちゃんは教室に入ってきた瞬間からあれだった。私を見つけては睨んで、すれ違っては睨んで。睨んで睨んで睨んで睨んで。ついに給食の時間になってしまった。

 私の中学校では給食時、給食配り班と給食配膳班の二つの班の仕事があって配膳を行うのだ。一週間交代で六班あるうちの二班にその仕事が回ってくる。給食配膳班は食缶の中に入っている野菜やコロッケなどの給食をお皿に盛るのが仕事。配り班はその配膳班が盛ったお皿を皆の席に配るという仕事だ。

 そして美穂ちゃんは配り班だった。嫌な予感しかしない。例えば持ってる汁のお椀を私の頭にかけるとか。って、まさかね。そんな古典的ないじめを今時やるわけないか。

 なんて考えていたら突然肩に熱さを感じる。

「あつっ」

「あら、ごめん。私なんてことを。本当にごめんね千鶴ちゃん」

 うそ、まさか本当に思った通りにあるなんて。汁をかけられたのは肩ではあったけど、私に汁をかけたのは美穂ちゃんだった。

「っおいあんた。千鶴に何やってくれてんの?」

 それに気づいた千穂が早速自慢の拳を美穂ちゃんにちらつかせながら喧嘩腰で話す。

 教室中がざわつきだした。どうしよう。

「ごめんね。本当にわざととかじゃなくて、手が、滑っちゃって」

「それ本当? あんたさぁ、朝からずっと千鶴を睨んでたじゃん? その言葉信用ならないんだけど」

「……っ」

 美穂ちゃんが少し焦った表情をしたけどすぐに申し訳ないような表情に戻った。

「そう見えていたのなら、ごめん。でも本当にわざとじゃ……」

「おい、どうしたんだ。って、千鶴、肩がびちょぬれじゃないか」

 突然先生の声が響いてきた。担任だ。

「えと、まあ」

「ごめんなさい。私がこぼしちゃって」

 するとすぐに美穂ちゃんが先生の前に立って上目遣いで先生を見る。

 その後ろで千穂が小さい声で良い子ぶっちゃって、なんて言っていた。

「そういうことか、まあ、とりあえず千鶴、保健室に行って着替えもらってこい」

「はい」

 私は先生に言われた通りに保健室に行くことにした。この空間に一秒でもいたくなかったし、服が汁で汚れてるしね。だから教室を出ようとして。

「ちーちゃん!」

 がっくんが声をかけてきた。

「平気? 熱いよね? 僕が保健室連れてくよ」

 純粋に嬉しかった。でも、こうなったのはがっくんのせいでもあって、複雑な気持ちだ。

「一人で平気。それに学校ではちーちゃんって呼ばないでって言ったでしょ」

 後半は皆に聞こえないように小さい声で言った。

 簡単に言ってがっくんはモテる。だから女子に目の敵にされないようにその愛称で呼ぶことは駄目って言ったのに。

「ごめんでも」

「平気だから」

 心配するがっくんに短く返事をしてから今度こそ教室を出た。

 あーもう。ほんとにそっけない態度ばっかとっちゃって、自分のバカ!

 自分の汚れた服を見てため息をつく。給食配膳の時間とはいえ、数人の生徒は廊下に出ていた。その子たちの目線が痛かった。千穂でも連れてくればよかった。











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