第九部 306~325(夏:8月)
同日投稿一話目です
0306
獅子吼さんを肩車して構内を散歩していると、友人Bを肩車している後輩女子とばったり出会った。
わたし「……」
後輩「……」
友人B「あっ、その、これは」
獅子吼さん「……競争だな!」
突如始まる肩車レース!
ゴールは専攻会室!
ひとり羞恥に塗れる友人Bを無視して覇を競い合う!
勝利した。
所詮やつはアマチュア。
わたしとは経験値がちがう。
0307
名探偵だよ獅子吼さん!
獅子吼さん「し、死んでるっ!?」
獅子吼さん「ぺろっ。……、……!! これはケチャップ!?」
獅子吼さん「実は死んでなくて、料理の最中に居眠りしていただけだったのだ! 解決!」
とりあえず被害者の血を当然のように舐める探偵は、相当にヤバいと思いました。
0308
名探偵だよ獅子吼さん!2
獅子吼さん
「実は我がやった」
「今は反省している」
「カツ丼が食べたかった」
「生きていくのが辛いと口にしていたから、楽にしてあげただけなのに」
「むしろ善行では?」
サイコパス過ぎる。
そう感想を口にしたら、「おまえの真似をしてみたんだけど……」と言われてしまった。
ふぁっく。
0309
突然、友人AからLINEで
『(笑)』
という言葉だけ送られてきた。
構ってほしそうな雰囲気がバリバリだったので、敢えて既読スルーしておくと、
『あの』
『あれ?』
『あのー』
『まさかの既読スルー?』
『なにか反応してよ』
とメッセージが増えていく。
仕方ないので獅子吼さんとキャッキャしているリアルタイム動画を送りつけてやったら、家に乗り込んできた。
友人A「私にも構ってよ! 寂しくて死んじゃうでしょ!」
知らんがな。
0310
獅子吼さんと外を歩く時は、わりとよく手を繋いでいる。
というのもちょっと目をはなすと、すぐにどこかへ消えてしまうからだ。
今日の一幕。
獅子吼さん「お前はよく迷子になるからな、我が手をつないであげるからな!」
わたし「お願いしますね」
獅子吼さん「ほんとに仕方ないやつだな!」
やたらとニコニコしていたのが印象的だった。
0311
獅子吼さん「もし我がおまえのきょうだいだったら、どうする?」
わたし「死にます」
獅子吼さん「そ、そんなヤなのか……?」
わたし「嬉ションして死にます」
獅子吼さん「お、おう」
わたし「ていうか獅子吼さんとわたしって血の繋がりありませんでしたっけ?」
獅子吼さん「ないよ!?」
そんなせかいはまちがっているので修正しなきゃ。
0312
「鐘の音が聞こえる…」
深夜のファミレスでグダグダしていたところ、友人Bが突然そんなことを言い出した。
獅子吼さん「はっ…まさか、祇園精舎の…?」
友人B「(こくり)」
獅子吼さん「(ゴクリ)で、では、諸行無常の…?」
友人B「響きがある」
獅子吼さん「沙羅双樹の!」
友人B「花の色…!」
二人「きゃっきゃ」
なにが楽しいのかさっぱり意味がわからなかった。
0313
獅子吼さん「今日はアニメ見るのにゃ」
友人B「それはいい考えなのにゃ」
友人A「おいしいお酒飲みながら見るのにゃ」
三人がなにかを期待するような目でこちらをじっと見てくる。
わたし「わかった般若」
三人「!?」
わたし「君は後ろ弁天、前般若」
友人A「!?」
自分で自分を見失ってしまった。
0314
獅子吼さん「もし転生するなら、どんな世界がいい?」
突然そんなことを言われた。
とりあえず鼻の下を人差し指でこすりながら「獅子吼さんと一緒の世界がいいかな。へへっ」と答えたところ、「でも我の希望先は争いのない平和な世界なんだけど、おまえそこでちゃんと生きていけるか? 触れるものみな傷つけたりしないか?」と心配されてしまった。
わたしはナイフではないんだけどなあ。
0315
今日はいろいろと落ち込むことが多い日だったので、帰宅してから獅子吼さんに構ってもらった。
膝枕で頭よしよしである。
獅子吼さん「おまえはあまえんぼさんだな」
獅子吼さん「よくがんばったぞ」
獅子吼さん「今日は特別に我を抱きまくらにしてもいいからな」
もうおうちからでたくない。
0316
先日の件で改めて思い知らされたが、獅子吼さんの取扱いには細心の注意を払わなければならない。
うっかりすると後戻りできなくなる。
まったく、獅子吼さんは本当に人をダメにする獅子吼さんである。
友人A「いや、あんたもうとっくに手遅――」
雑音が聞こえた気がするが気のせいだった(過去形)
0317
「セミの気持ちを知るために、今日一日セミになります」
と獅子吼さんが言い出したので、今日はお腹に獅子吼さんを張り付かせたまま過ごした。
なかなか乙な一日だった。
獅子吼氏のコメント
「最初は顔が埋もれて息をするのが大変だったけど、いいポジションを見つければ多幸感に包まれる。セミも捨てたもんじゃないね。心がほっこりしたよ」
0318
昨日の影響か、獅子吼さんが幼児退行してしまわれた。
基本、外だと我が道をゆくといった感じでどこぞへ突き進んでいくのだが、今日は必死にちょこまかと後ろをついてくる。
思わずいつものノリで、ダッシュして引き離そうとしたら、泣かれてしまった。
ちょ。
土下座かましてなんとか許してもらった。
罪悪感がひどい。
わたしはなんてやつなんだ……。
0319
獅子吼さん「昨日は何もなかった。そうだな?」
わたし「あ、はい」
ということで昨日の幼児退行はなかったことになった。
わたし「一人だと危ないので手を繋ぎましょう」
わたし「はい、あーんです」
わたし「ほーら抱っこ背中ぽんぽん」
獅子吼さん「…ハッ!? だからそういうの止めろってゆってるだろ!」
0320
獅子吼さん「なーなー、アレやってアレ」
わたし「獅子吼さんも好きですねえ……はい、壁ドン」
(ドンッ)
獅「きゃっきゃ」
獅「もういっかい! もういっかいだけ!」
わ「はいはい」
(壁ドンッ)
友人A「いやそれ蝉ドンだから。実際にできるやつ初めて見た……マジ引くわ。っていうか、うわ、その体勢のまま無言でこっち見んな! 怖いよ!」
0321
友人Bが「蝉ドンってなんですか?」と言うものだから、実際にやって見せることにした。
「ちょ、なんで迫ってくるんです?」
「いや、え、こんな隅に追い込んで何をしようっていうんです!?」
「いいモノ見せてあげるって、なに見せる気ですか!? や、」
(蝉ドンッ)
友人B「ぴぃっ!?」
涙目にさせてしまった……。
癖になるな、これは。
0322
昨日、あれから調子にのって、友人Bが隙を見せる度に蝉ドンしていた。
そのせいか、今朝からひどく警戒されてしまっている。
友人Aの後ろに隠れたまま出てこない。
正直、すまなかったと思っている。
お詫びの蝉ドンを
B「ほらぁ! そういうところが、あなたは、もうっ、ほらぁっ!」
友人Aに呆れ顔でしっしとされて引き下がる。
ごめーんね?
0323
友人B「謝罪を要求します! 精神的損害を被りました!」
わたし「なにすればいいの?」
友人B「え? あ、いや、その、もうちょっとやさしく接してください。お猫さんを相手するみたいに」
猫可愛がりしてやったら、次の日に「やっぱり、普通でいいです」と言われてしまった。
円形脱毛症になりそうって、ならないよ。
失礼な。
0324
友人A「席を外している隙に、私が確保しておいたポッキーが全部なくなっていました。さて、ではここで容疑者の証言を聞いてみましょう」
友人B「自然発火して灰になってましたよ」
獅子吼さん「あいつはイイやつだったな」
わたし「それより完全数の話をしよう」
友人A「うるせえ」
0325
わ「ここにパイの実があります」
獅「はい。とてもおいしそうです」
わ「そしてこちらには湯煎してトロトロになったチョコレートがあります」
獅「甘いです。あまーいです」
わ「パイの実をこのチョコにひたすと…」
獅「そ、そんなのうまいに決まってる! あーん! ほらあーん!!」
今日は涼しかったので、そんな感じでチョコフォンデュパーティした。
おいしかったです。