第四部 142~177(冬:2月あたり)
0142
友人B「何度でもいいますが、私はピーマンが嫌いなわけじゃなく、消化酵素がないから食べないだけなんです。だから獅子吼さん、これあげますね」
獅子吼さん「何だ、おまえピーマン嫌いとか子供っぽいな。じゃあ代わりに我のにんじんあげる」
友人B「人参食べられないとか子供ですね。ぷーくすす」
学食でそんなやり取りをしていたふたりを見て、周囲がみんなほっこりしていた。
0143
友人B「なんですか? こんな問題もわからないんですか? 高校生レベルですよ。遊び呆けてばかりいるから脳みそが退化してしまったんじゃないですか? え? ……まあ、そこまで言うならこの程度教えてあげてもいいですけど……まったくしかたない人ですね」
罵られながらニヤニヤしている男子学生を良く見かける。
そろそろ通報しておいた方が良いんだろうか。
0144
たまにはわたしだって甘えたいときはある。
獅子吼さんのお膝は大変よろしゅうございました。
0145
お風呂上がりに獅子吼さんがせがんできたので、お耳を掃除してあげた。
ふやけてもなおしつこいところをカリカリしてあげると、ふにゃふにゃ声を上げるので、夢中になってしまった。
ついつい息を吹きかけたり、耳裏をこすったりとイタズラしてしまったのも仕方ないことだとおもいます。
0146
男子学生「なんかさ、おまえらって皆こじらせてるよな」
わたし「は?」
友人A「ど、どこがぁ!?(裏声)」
友人B「というか、あなたに言われたくないですね」
獅子吼さんを肩車している男子学生「???」
0147
友人B「まさか、獅子吼さんが外宇宙からの訪問者だったなんて!」
獅子吼さん「我は審判者。地球人類が我々大銀河連盟の一員となるに相応しいかを見定める者」
友人A「そ、それで私たちはどう判断されたの!?」
獅子吼さん「愚かなる貴様らに、我々の同胞たる資格はない! おまえたちは我のペットとなるのだァ――!」
友人A「にゃんにゃん!」
友人B「にゃぁーん!」
先週、酔っ払ったときに突然はじまった茶番。
わたしはずっと録画していた。
0148
友人A「ホームパイの方がおいしい」
友人B「は? 断然源氏パイですし」
わたし「うなぎパイおいしい」
獅子吼さん「冷やしたパイの実一択」
ちょっと、それはちがうかな。
0149
今日はコタツでぬくぬくしながらの読書デイ。
友人Aは『ドラゴンヘッド』、友人Bはゴールディングの『蝿の王』、わたしはハインラインの『ルナ・ゲートの彼方』、獅子吼さんは『宝島』。
その後、興奮した獅子吼さんにより第一回屋内宝さがし大会が開催される。
久しぶりにこの遊びをやったな……。
0150
友人A『恋……? それはとても甘く、切ないチョコレート。はい、これが私からあなたへのき・も・ち』
14日の夜、ベロンベロンになるまで飲み明かしたときの一場面。
ちなみにこのあと、チョコレートを咥えて、スマホを構えるわたしに迫ってきたので、軽くビンタしておいた。
心なし嬉しそうだったような気がしないでも……いや、やめよう。
0151
いつものメンバーの間で、誰が作るカレーが一番おいしいのかという論争が勃発し、今日から四日間、毎夕の食事で決めることになった。
場所はいつもの如く溜まり場になっている我が家。
初日は友人A。
具材は、じゃがいも・にんじん・たまねぎ・牛のバラ肉で、ルーは市販のもので定番系。
調理法も特に奇抜なものはなく、ごく普通に出来上がる。食べた感じも、まあ、普通においしい。
何のオチもなかった。
0152
カレー対決二日目。
本日は友人B。
野菜は定番の三種だったが、肉は豚のスネ肉を使用。
しかも肉をワインで煮込むところからはじめたので、調理時間の合計が二時間を越えた。
調味料の量も持参した測りで、きっちりミリグラム単位で計測。
ルーはそのあたりのスーパーでは見たこともない高そうなやつで、とりあえずこだわりまくっているのは伝わった。
ただしその手つきはとてもぎこちないもので、今だけ頑張っている感がすごかった。
とりあえず、おいしかったです。
0153
カレー対決三日目。
本日はわたしの番である。
わたしの場合、定番野菜三種に、牛のひき肉を使う。
ついでに一欠片すりおろしたにんにくを加えて、隠し味にインスタントコーヒーを少し投入。
これでコクがでる(ような気がする)のだ。
みんなの感想は、「まあ、おいしいよね」。
うん。
0154
カレー対決四日目であるが、皆気づいていることがある。
わたしたちレベルだと、それっぽい手間や工夫を掛けても、はっきり甲乙つけられるほどの差は生じないということに。
おいしさというより、好みの差であり、そうなると当然自分好みの味付けをした自分のカレーが一番おいしいという結果になる。
しかしそれでも獅子吼さんならば、或いは……!
というわけで獅子吼さんの番である。
具材は、定番野菜三種に加え、キャベツ、牛肉、トマト、そしてビーツ缶。
ついでにハーブとかサワークリームも投入され、じっくりコトコト煮込まれること三時間。
出来上がったのは、赤い色をした最高においしいスープ。
わたし「ボルシチですね」
獅子吼さん「ボルシチだ!」
友人A「一番おいしかったわ」
友人B「美味」
そういうことになった。
0155
寒い夜。
熱々のお鍋と日本酒熱燗の組み合わせは最高に効く。
今夜も泥酔して、べったり獅子吼さんに甘えてやった。
なでなでしてもらったぜ。
0156
懐かしき日の思い出
獅子吼さんと知り合って間もない頃、調子にのってふたりできゃっきゃと鬼ごっこしていたら、隣駅まで行ってしまったことがある。
体重が一キロ減って、次の日筋肉痛になった。
獅子吼さんはケロっとしていたのを今でも覚えている。
あと、汗で大変なことになっていたわたしの顔を見て、
「おばけがいるwww m9(^Д^)」
と大笑いしていたのも、今でも覚えている。
ぜったいに、わすれない。
0157
大学に入学すると、方言の違いでカルチャーショックを受けている人を少なからず見かけるが、幼い頃のわたしがカルチャーショックを受けたことのひとつに、どこの家庭でも必ず家畜のしめ方を習うわけではないということがあげられる。
中2ぐらいのときに「わたしの手は、もう血に染まっているんだ……」というネタをやって、本気で引かれたのを今でも覚えている。
0158
子供の頃、うちに遊びに来た同級生に昼食を御馳走して、「そのお肉、午前中にわたしがしめたんだよ!」と笑顔で教えてあげたら、次の日からしばらくの間、クラスメイトに遠ざけられた思い出。
一生懸命に詳細を語ってあげたのと、そのとき頬に飛び散った血が残っていたのが致命的だったらしい。
その後、同じ同級生を野犬から肉体言語で助けてあげてから、また以前のように(やたらと接する距離が近くなったけれども)付き合ってくれるようになった。
0159
今日は半日ぐらい、猫じゃらしで獅子吼さんを遊んでやった。
途中、近所の猫も乱入してきたので、わたしはいつもより二倍ほっこりした。
明日から、まだがんばろうと思った。
0160
講義前、獅子吼さんとふたり、席でぼうっとしていたところ、ふと思いついて隣の獅子吼さんへそうっと人差し指を突き出してみた。
数秒、はてなマークを浮かべていた獅子吼さんだが、すぐにハッと何かに気付いた顔をすると、そろそろと自分の人差し指を近づけてきて、やがてふたつはひとつとなった。
満足した気持ちになったが、特に意味はなかった。
0161
若奥様「まるでお友達みたいな親子関係ですね」
わたし「いえ、実際、友人ですので……」
若奥様「またまた」
わたし「いやいや」
獅子吼さんが公園デビューしたとき、近所の若奥様たちとかわされた会話。
今でもときどきお茶会にお呼ばれすることがある。
獅子吼さんを連れていくと大人気なのは言うまでもない。
0162
獅子吼さん「ベッドをあたためておいた!」
獅子吼さん「人間湯たんぽだぞ!」
獅子吼さん「人間目覚ましだぞ!」
わたし「いっしょに寝ましょうか」
獅子吼さん「うんっ!」
0163
友人B「なんですか? 隣座りたいんですか? まあ、どうしてもっていうなら? 座っても? いいですけど? え? ちょ、なんで私を挟むようにして座るんですか! そんなにくっつかないでくれます!? せま、せまいんですけどぉ!?」
いつものように、友人Bが同学年のやつらにいじられていた。
入学したばかりの頃はぼっちを拗らせていたが、今ではこんなに仲良し。
というか、友人Bはどうして同学年と親睦を深める前に、わたしたちについて回るようになったのか、いまだにわからない。
友人A「え? いや、そりゃあんたが歓迎会で絡まれてたあの子を――って覚えてないの? 本気で?」
何人か素行が悪かったのを蹴散らしたような記憶がないこともないが、いつものことなので覚えていないと言うと、呆れた顔をされた。
謎である。
0164
???「ふふっ、この程度の酒量で酔ってしまうなんて、何てかわいらし――ちょ、ちかい、近いわよあなた! 何!? そのキャラ寒いって、別に作ってなんか――え!? ちょ、腕いたいっ!? なにこの力! あんたゴリラなの!? いやだから近いって、ちょ、無理――あっ」
大体その次の日ぐらいから、友人Aのあのクソ寒いキャラ作りはなくなった。
いまだにそのあたりの記憶が曖昧である。
0165
獅子吼さんA「今日は新しいゲーム買いにいく!」
獅子吼さんB「ちがうし! 今日は映画見に行く予定!」
獅子吼さんC「おいしいスイーツ食べにいくんだぞ!」
獅子吼さんD「そんなことよりサッカーしようぜ!」
わたし「いやあ、困りましたねぇ……えへへ……」
という夢を見た。
畜生が……!
0166
最近、自作柚子のはちみつ漬けにハマっている。
といっても、厚めにスライスした柚子をタッパーに入れてはちみつをぶちこんだだけのごく簡単なもの。
これを熱々のお湯で割ったものに、少し焼酎を投入すると、身体の芯から温まるドリンクの完成である。
お供はプレーンのクラッカー。
実に良い。
0167
今日の夕餉は月一のお菓子パーティだった。
皆で持ち寄ったのをお酒と一緒に欲望のまま食い散らかす、尊厳的な何かの危機と隣合わせの危険な催しである。
お菓子以外は一切持ち込まず、後のことなど何も考えない。
ただひたすら満足するまで食べまくる。
翌日は大体胸焼けと後悔で酷いことになる。
0168
酒の席でポテチうすしお、のりしお戦争が勃発。
そこにコンソメが横殴りをかけ戦火は拡大、更には、燻っていたコイケヤ・カルビーの民族対立にまで飛び火し、大惨事へと発展してしまう。
第三国たるスイーツの調停によって、ようやく争いはおさまりかけるも、様子見をしていたチップスター派によって
(以下略)
0169
着る毛布はあたたかいが、獅子吼さんと二人羽織状態にすると更にあたたかい。
問題があるとすれば、それで映画や録画ドラマを観始めると、獅子吼さんが五分も経たずにこてん、と寝入ってしまうことだ。
そうやって、毎日同じ映像を最初から見続ける羽目になっているが、なかなか趣があってよろしい。
0170
獅子吼さんが何やらウンウン唸っている。
「もしかして我々人類は……いや、やめておこう。知らずにいられるのであれば、その方がいいんだ……」
「別にモノリスに操作されて知的生命に進化したわけじゃないですからね」
「なっ、なぜそれを……!?」
昨日一緒にその映画観ましたからね。
0171
獅子吼さん「トッポはポッキーとプリッツのどちらに分類されるお菓子?」
わたし「トッポはそれらの最上級型です」
獅子吼さん「えっ」
わたし「スティックスイーツタイプで、トッポこそが至上。わかりましたね?」
獅子吼さん「は、はい」
わたし「よろしい」
0172
0173
0174
友人B「きいてるんですかぁ、わたしはですねぇ、こんななりでもぉ」
獅子吼さん「おー、よしよし、いいこいいこだぞ」
友人B「でへへぇ……もっと、あまやかしてもいいんですよぉ」
獅子吼さん「にゃふにゃふにしてやるぞ!」
大量にアルコールが入ると、友人Bはこうやって誰かに絡み始める。
0175
友人A「ちょっと~、あんたきいてんの~?」
わたし「え?」
友人A「だからぁ」
わたし「え? 何だって?」
友人A「い、いやだか
わたし「え!? 何だって!?」
友人A「うわあああん、あいつがいじめるぅ!」
獅子吼さん「おーよしよし、あいつは時々いじわるだからな」
アルコールが入ると友人Aは大体こんな感じである。
0176
友人B「だっこ!」
わたし「ん?」
友人B「だっこだっこ!」
わたし「んん?」
友人B「もっとかまってくださいよぉ! なんでそんな意地悪ばっかりするんですかぁ!」
わたし「めんごめんご(笑)」
友人B「うわあああああ!(ぽこぽこ)」
アルコールが入った友人Bは、からかい過ぎるとこうやって叩いてくるが、基本ぽんこつなので痛くない。
心地よい振動だ……。
0177
???「こもりうた! こもりうたたって!」
獅子吼さん「ええ~?」
???「ねんねするから、うーたーあーってーよー!」
獅子吼さん「まったく、しかたないな!」
(露語民謡)
???「あたまなでなでしてー?」
獅子吼さん「はいはい」
???「むふふー」