来章 そして彼は盾を愛する
それなりに手ごたえを感じた作品だっただけに、落選したからとお蔵入りするのはもったいないと思い、皆さんの意見も聞いてみたいと思ったのもありこうしてなろうにて投稿させていただきました。
流行とは程遠い感じの好きな事を書きたいように書いた作品ですが、楽しんでいただければ幸いです。
来章 そして彼は盾を愛する
「貴方が好きです。愛しています。だから、私と夫婦になってください」
金糸の髪の少女は、その白い頬を夕焼けよりも赤く染めてそう言い放った。涼風に、彼女の纏う薄衣の和装がたおやかに揺れる。
突然の事だった。
共に死線をくぐり抜けた相棒の告白に、それを受けた少年が呆然と佇む。言葉がないのか、口をぱくぱくとさせて、かろうじて手の中の荷物を取り落とさずに済んでいるといった体だった。その背後で、灰色の髪の少女が、こんな時も張り付いた無表情を崩さず、しかし手の中で弄んでいた分解整備中の拳銃を握りつぶした。
金の少女は、振り返った姿勢のまま、顔を真っ赤にして待ち続けている。ややあって、フリーズ処理の終わった少年が、おずおずと金の少女に問いかけた。
「唐突すぎない?」
「……うぅーーっ!」
「わ、わかった! ごめん、俺が悪かった!」
思わずの本音に、威嚇するように金の少女が唸った。恥辱と怒りにか、少女の腰に差された太刀の柄に手が延びるのをみて、少年が平謝りに謝る。それを見て、少女はゆっくりと刀から手を離した。
「う、うぅ……」
それでも、真っ赤な顔で見つめてくるのは変わらない。ついでに、背後で灰色の髪の少女もさりげなくガン見に入っている。
ややあって、少年が口を開いた。
「正直、嬉しいよ。君の気持ちは、とても嬉しい。……だけど、御免」
「!?」
ガガーン、といった表情で頬を押さえ、膝をつく金の少女。そのまま崩れ落ちて、ぷるぷると震える彼女に、少年がさらに追い打ちのように言葉を重ねた。
「俺には今、もっと夢中になっているものがあるんだ。だから君の気持ちは受け取れない。ごめん」
「…………」
涙目で、金の少女は少年を見上げ、視線で背後の灰色の少女と少年を交互に見やる。まさか、そういうことなの? と視線で問いかける彼女に、少年は首を振った。
「そういえば、まだ言ってなかったね。俺が夢中なのは……これさ!」
そして取り出されたのは、彼が店をでてずっと手に抱えていたもの。
盾だった。
「ポジニウム鉱石製のライオットシールド! 今まで使っていた強化ポリカーボネート製のシールドに比べればずっと重いけどその防御力は桁違いさ! 特に着目すべきなのはその衝撃吸収力で、衝撃をほぼ完全に吸収してくれるということは攻撃を完全に無力化するということと動議であり……」
熱く、うざったいぐらい熱く、新たに手に入れた盾について熱弁する少年。その目には、文字通り盾のことしか写っていない。
一方、金の少女はあまりの事態に灰になって、さらさらと崩れ落ちるしかなかった。
恋敵どころか。道具に負けた。
そんな二人を我関せずと他人の振りをしながら、灰色の少女は一言、「告白でいきなり夫婦とか、ちょっと重くない……?」と呟き、金の少女にとどめを刺した。
この物語はそんな、一人の盾好きと、そんな彼と縁をもった二人の少女の物語。
あくまで導入部ですので、本編はすぐに。
どうか私の作品で、貴方に楽しい時間を提供できる事を切に願って。