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50分  作者: 小説を共作
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本能寺戮 その1

 授業というのは高校生活の大部分を占めている。

 高校生活といえば一度しかない青春! 青春と言えば学園祭や体育祭、修学旅行!というような頭の悪いイメージが世間には流布しているが、実際は高校生活と言えば退屈な授業の繰り返しだ。

  ずっと着席して教師の一方的な講義に耳を傾けなければならず、間の休みにはトイレくらいしか行けるところはない。

 そんな50分間の苦行が毎日5回も繰り返され、その辛い毎日の繰り返しがさらに5回。それでやっと一週間だ。

 特に俺が通う高校は所謂自称進学校という厄介な所だ。半端な進学実績に満足していればいいのに、変なプライドがあるのか教師たちは実績を上げようと躍起になっている。

 おかげで授業中以外にも予習やら課題やら補習で拘束される。おまけに最近は模試なんぞが土日にあることも少なくなく、気付いたら自宅の場所や家族の顔を忘れるレベル。

 いや流石にはそれはないけれども。

 だが、高校というコミュニティが不健全に肥大していることは否めないだろう。

 例えば今、教室の前方で談笑している3,4人の男子たち。

 彼らの話題は専ら、ある特定の人間への陰口である。

 彼らはこのA組のトップカースト、主流派、1軍、まあ何でもいいがとりあえず「イケてる(笑)ポジション」を自認している連中だ。

 自らのポジションの優位性を保ちたいのかなんだか知らないが、彼らは集まれば下位層の生徒を槍玉に挙げて盛り上がる。そうでない時は、芸人気取りの寒々しいトークに花を咲かせ、内輪ネタで爆笑している。それでいて成績が良く、見栄えがいいために女子に人気だから性質が悪い。

 問題は高校の在り方にある。

 一週間のうち5日あるいは6日も学校に拘束されれば、学校以外のコミュニティに身を置くゆとりが無くなる。

 家と高校だけが世界の全てのように錯覚し、高校での地位が高いからという理由で立場の弱い者を軽んじ、学内での成績が良いというだけで傲慢になる。実際は、狭い箱庭の中でドラミングしているに過ぎないのに。

 まあ何が言いたいのかというと、高校なんか週三回くらいでいいだろってことだ。月水金な。

 だが、いつだって理想は打ち砕かれるものだ。

 無情にもチャイムが響いた。談笑していた者も自分の席に戻り、トイレに行っていた者も慌てて教室の中に入ってくる。

 入学してからもう1年と少し経つ。今まで何度チャイムの音を聞いてきただろうか。

 登校してからのSHR。1限から5限まである授業。放課後の部活や補習。

 そのたびにチャイムは鳴り、俺たちの時間を切り分け、高校生活としての意味を付与していく。

 繰り返し、繰り返し。決して狂うことなく、一定のペースで鳴り続ける。

 また今日も、変わらない高校生活が、授業が始まる。帰りたい。


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