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ロード・サリヴァンと男娼宿の少年  作者: サイキッカー
3/3

葬暦1360年 4月12日 アル・グレイ 著

物語の主人公(ヒロイン?)・アル君がたまに日記を書きます。

男娼宿には宿泊客を記録する係などがあり、アル君も業務連絡などの事務的な文章には馴染みがあるようですが、ありのままに自由律な日記は少々苦手の様子。

 日記と呼ばれるものは最初に日付と名前を書くのだとサリヴァンに教わった。今日始めて自分用に日記帳を貰ったのだが、いきなり何かを書けと言われても、なかなかどうして難しいものだ。

 魔導列車の座席で対面に座りニヤつくサリヴァンにその表情の意味を問い質したところ、「慣れない執筆に四苦八苦するアルを眺めるのが楽しい」などと言ってきた。

 このままでは僕の苛立ちが募るばかりなので、仕方が無いのでここは今日彼から聞いた“この国の歴史”について簡単にまとめたいと思う。


 この世界……今の僕達がいる時代の前に、四つの時代があったとされる。それぞれが一つの大きな戦争に区切られ、その都度、その時代に新たな世界が生まれたのだそうだ。


 第一の時代は「ホム・サピエンソ」と呼ばれる。まだ人が人と呼ばれない世界の萌芽。その起源となる最初の闘争こそが人の始まり。


 第二の時代は「ウェルサイユ」。国際社会の黎明期。大海を渡り、世界が閉じていることを示した時代。その事実が故に世界は閉塞し、小さな世界に対してあまりに過剰な戦禍が空を覆ったと言われる。


 第三の時代、「ヤルタ」は偽善の世界。ウェルサイユとは比較にならない程の凄惨。より閉塞した世界では人種差別が横行し、もはや人の手に余る程の力を手にしながら、“抑止力”の名の下に人は過ちの火を振りかざす。それらを正義と嘯くことが当たり前となってから、人は徐々に心を鈍く腐らせていく。


 第四の時代は「ヒージュラ」……人としての尊厳は最早失われ、鉄の脳が1と0で人を管理する世界。将来起こりうるとされた人口爆発の影響で、人に宛がう楔の数が足らなくなるのを恐れて、鉄の脳は終わらないテロリズムを引き起こした。その結果、人は自らが生み出した鉄の脳を殺めて、それまで積み重ねてきたあらゆる叡智と決別した。そして、かつて人と称していた彼らは、僅かばかり生き残った赤子を揺り篭に遺し、静かに天へと昇っていった。


 葬られた歴史の最期から遡って、およそ1360年目になる現在こそ、今の僕達が生きている世界だ。

 サリヴァンはこの国の歴史を語る上で最初にこの話をしてきたのだけれど、僕からすればこの手の話はむしろ『神話』と称した方が馴染み易い。イグナント国教の神話に登場する『天使』は、かつて楽園から追放されてこの地上に住み着いた……こんな風に話した方が自然なんじゃないかなって思う。そもそも、話の途中で「背の低い少年と太った男の二人が、合わせてうん十万人と二つの都市を焼き殺した」なんて言われても、とても現実の話とは思えない。僕はそんなサリヴァンの話を「馬鹿馬鹿しい」と鼻で笑ったのだけれど、彼は真剣な表情で「その馬鹿みたいな奴らの眷属に、人類は幾度と無く滅ぼされかけたのだよ」と言い聞かされた。

 サリヴァンが僕に歴史を言い聞かせる時、彼はまるでこの目で見てきたかのような口調をする。気になるかと問われれば、それはせいぜい心に引っかかるかどうかといった程度で、僕の身体が目当てという彼の動機に比べればまったく可愛いものだ。

 因みに、僕が今この日記を書いている最中も、サリヴァンは含蓄とも妄言ともとれる一方的な講義を続けている。すごくつらい。

 今の彼が話している内容は、イグナント王国首都ロンディアムの産業についてだ。流石は見た目はイケメン、中身はババア。おばさんが話し出したら止まらないのは彼にも当てはまるものらしい。なんかメモ代わりに日記帳に書くのもかったるくなってきた。

 ロンディアムについては、サリヴァンとの馴れ初めから主従契約までの期間で嫌になる程体験したからなあ……――はあ。……早く寝たいなあ。


(以降、くだらない落書きが続く)


因みにこの日記はサリヴァンも読みます。

いくらアル君が拒んでも魔女であるサリヴァンには暖簾に腕押し糠に釘~♪

今更ですが、日記シリーズは本編の時系列に必ずしも合わない為に、たまに今後の展開のネタバレが入っちゃうかもしれません。

読者の皆様は要注意です!!!!

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