エピローグ
『新規結成!日本戦闘員5人集!!』
そんな見出しが雑誌の一面に踊っていた。それを母さんは笑ってみていた。
「色鮮やかね~」
「そこ?」
「でも、灰色は少し目立たないわね」
「いや、ボクは別段目立ちたくないし」
テーブルを挟んででそんなやりとりをする母さんと白乃。
ロキ復活と世間で騒がしくなって一週間。ミッドガルドは今日、この雑誌をもって正式な発表とした。といっても、あれ以来まだラグナロクが表れていないのでロキの戦闘は放映されてはいないのだが。
その為、ロキの攻撃方法と相まって幻の戦闘員なんて揶揄されている。それも次にラグナロクが表れるまでの間だろうが。
「それとは、別に……彼はどう?」
話を切り替えるようにどこかニヤニヤとした笑いを浮かべながら尋ねる母さん。
「彼?」
「雨澤くんの事よ、雨澤くん」
「雨澤さん?元気にやってるみたいだよ」
「……そういう意味じゃないんだけどな~」
「?」
首をかしげる白乃。
(どういう意味?)
―――さあな。
とりあえず適当にそんな風に返してみせるが俺はなんとなく母さんが言いたいことを察した。
つまりは母さんは白乃が雨澤さんを男性としてみているかときいてるのだろう。だがしかし、白乃は理解できていないようだ。
白乃とは共に過ごしてきたがとことんこういう話には疎いようだ。それは、“自分の気持ち”に気づいていないであろうことを意味している。
「それより、今日は大変ね」
話を切り替えるように笑いかける母さん。そう、今日は確かに大変だ。といっても、大変なのは白乃で俺は違うけど。
「うう……もう今から嫌になっちゃうよ。雑誌で説明してるんだからわざわざ記者会見なんていらないのに」
「私達市民にとってはミッドガルドは英雄だからね。やっぱりこういう機会にちゃんと話を聞きたいものよ」
「……理解はできるけどさ」
やだなぁとぼやく白乃。
ロキを新たにメンバーとなることを正式発表したのは雑誌だが、その他説明会及び質問会として記者会見が用意されていた。それになぜかロキだけでなく他のミッドガルドメンバーも参加することになっているのだ。そして所長である二宮博士はなぜか非参加という状況……意味が分からない。
「よしっ、そろそろ時間ね。いってらっしゃい」
「うん、いってきます」
白乃は立ち上がって母さんに返し外にでた。
少し歩くと待ち合わせしていたメンバー全員と合う。珍しく白乃が最後だったらしい。
「おそかったな、白乃」
「これでも時間五分前なんですけど……というか、椎名さんにはあんまり言いたくないんですけど」
思わず返す白乃。そりゃそうだ、遅れの常習犯は椎名さんなんだから、椎名さんだけには言われたくない。
「白乃ちゃんは時間通りだもんね~」
「そうですわね」
俺たちの擁護を桃花と若草さんがしてくれる。そして赤崎さんが少し笑いながら種明かしをする。
「というより、今日は遅れたら大変だから夏藍にはミッドガルド内で寝泊まりしてもらったんだがな」
「あっ、なるほど」
それで赤崎さんに連れられてか。というかあくびしてるし、眠いんだろう。
「それでは、参りましょうかみなさん」
俺たちが一通り挨拶し終えたのを確認してか今日の運転手役を買って出てくれた雨澤さんが声をかけてきた。それに頷きみんなで大きめのバンに乗り込む。
なぜか赤崎さんいかが全員後ろの席に乗り込んだため白乃が助手席に座ることとなった。そこは赤崎さんが座れよと少し思ってしまった。
「シートベルト閉めましたねー。じゃあ発進しますよ」
その声と共にアクセルを踏む雨澤さん。
その初めて見る姿にボーとみる白乃。
うん、面白くない。
「そういや、免許持ってたんだね」
なんて話しかける白乃。
「まあね。なんだかんだで免許は持ってて損はないからね」
「そ、そうだよね」
笑いかける雨澤さんにどこかあわてて返す白乃。
これで自分の気持ちに気づけないのだからどこか白乃は抜けてるんだなと思ってしまった。
―――それがいいんだけどな。
(ん?なに?)
―――なんでもない。
自分の謎の嫉妬心に俺は小さく笑ってしまった。