第一話 異世界のバカップル
「―――――な子ですよ!!」
私の頭に突然こんな声が響いた。
もちろん、私は「うっさいな。誰よ、こんな朝から騒いでるのは」と思っていたのだが、
こんな私の声が相手に届く筈もなく、辺りはさらに騒がしくなっていった。
「でも――――きませんね」
「――――な」
「―――――気なんですか!!!!」
男の人の声が私の頭の中で木霊する。
うるさい!!もう誰だ!黙ってろ!!
もう、我慢の限界だ!と私が叫ぶと突然、
「うぎゃああああああ!!!!!!!!!」
という、赤ん坊の泣き声が聞こえた。
「あ、先生。泣きましたわ!」
「よし、なら問題は無いだろう。安心してください、ヒュートさん。元気な女の子ですよ」
「そ、そうですか。はあ、良かった~」
「もう、貴方は心配し過ぎなのよ。貴方の子供なんだから、きっと元気だって言ったでしょう」
「『俺』じゃなくて『俺達』の子供、だろ?」
「ふふ、そうだったわね」
さっきとは違い、はっきりと聞こえる会話。
その会話の内容はとても微笑ましい―――ものではなかった。少なくとも私にとっては。
理由は三つ。
1私の眠りを妨げる者は、誰でだろうが、敵だ。
2会話の内容がバカップルすぎて腹立つ。
3ヒュートという名前に聞き覚えがある。
ここまで考えて、私は少しというか、かなり様子がおかしい事に気付いた。
まず、最初に確かに私は叫んだ筈なのに、なぜか赤ん坊の声が聞こえた事。
そして、ヒュートという名前。これは私が付けた「ファームファクトリー」の主人公の名前だ。
これは…もしかすると……あれかな?異世界転生っていう奴かな?
いや、でも夢っていう可能性もあるから…
取り敢えず、状況がわからないままだと、不便だから――目を開けてみますか。
そう思って目を開けるとそこには――美人と熱いキスをしているイケメンがいた。
そして、その美人とイケメンは、間違いなく私の知っている人だった。
「ファームファクトリー」の主人公――ヒュート=シュコリーと、メインヒロインのエリス。
なるほど。さっきの声もどこかで聞いたことがあると思ったが、こいつらの声だったのか。
てか、この状況って……
「ヒュートぉ、まだだめよ。エルが見てるわ」
「何言ってんだよ、エリス。エルはまだ赤ん坊だろ。大丈夫だよ、心配するなって」
「あら、さっきまでエルの事を心配していたのは貴方じゃない」
「そういや、そうだったな、はっはは!!」
ヒュートは少し大声で笑った後、またエリスにキスをした。
エリスもそれを拒まず受け入れると、そのままヒュートの下半身に手を――
って、ちょっと待てええええええ!!!!!!
「おぎゃああああああああああああ!!!!!」
私の叫び声はまたしても、赤ん坊の泣き声になって部屋に響いた。
しかし私の泣き声は、目の前の二人の行動を止めるには十分だったようで、二人は急いで私のそばに駆け寄ってきた。
「ど、どうしたの、エル?」
焦りすぎて声が上ずっているエリス。
というか、どうしたもこうしたもないでしょ。そういうのは、寝室でやるべきでしょ。
「す、すぐに泣き止んだから、大丈夫なんじゃないか?それよりも…」
こちらもエリス同様、上ずっている声のヒュート。
てか、それよりもって、ちょっと私の扱いひどくない?
「まあ、大丈夫そうね。でも貴方、続きは寝室でやりましょ。やっぱり子供の前ではちょっと…」
「そ、そうだな。続きは上でゆっくりと……な」
ヒュートはそう言うと、エリスを抱きかかえ、寝室のある二階に向かって行った。
……異世界とかめっちゃ面白そう、って思ってたさっきまでの私を、ぶん殴ってやりたい。
頼むから、これが夢でありますように。
やばい、なんかさっそく、R-15の場面を出しちゃった気がする。
ま、まあ、許してください…