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第21話:隼人VS烏丸鋭霧(前編)

 亜矢の家にいないってことはどこかに移動したってわけか。

 周りを見渡すと、少し離れた所に煙がたっている。

 多分あそこで今、戦闘が繰り広げられているんだろう。

 そこに移動中の時、その場所から何かが飛んでいった。

 魔法球か何かと横目で確かめると

「明日香?」

 すごい勢いで明日香が空中に舞い上がっていた。

 俺は明日香を追い、落ちてきた所を地上で受け止めた。

 額からは出血がひどく、手も力なくうな垂れていた。

「おい明日香どうした?なにがあった?」

「烏丸・・・化身が・・・気を・・つけて」

 っとだけ言って明日香は意識を失った。

 とりあえずこのままほっておくわけにはいかない。

 何か血を止めるものは・・・

 こういう事は経験不足のため、パニくってなにをすればいいかわからなくなる。

「どいてろ」

 悠夜が自分の服の袖をちぎり、明日香の頭に巻いた。

「こいつは俺に任せろ。お前は早く行け」

 そうだった。こんな所で時間を食ってる暇はない。

「悠夜、悪いな」

 俺はそう言い残して、烏丸の所へ行った。



 戦塵が立ってるのはこの辺りなんだが、烏丸たちの姿が見当たらない。

 叫んで光喜達を探すにしても、それじゃあ烏丸にも俺の場所がバレちまう。

「グルルルル」

 なんだ?このうめき声みたいなのは。

 人間じゃない、獣のような声。

 後ろから聞こえてきたため、振り返ってそれを確かめようとした瞬間、

「ガウ」

 青い狼が俺を襲ってきた。

 間一髪でその攻撃を避けられたものの、俺は体勢を崩し、その場に倒れた。

 狼は休むことなく、俺を襲ってきた。

 しかもそのうめき声はそいつ以外に、周りから聞こえてきたため、一匹じゃないことが一瞬でわかった。

 でもそれがわかったとしても、今の俺には避ける術がない。


             【ダークネスバスター】


 闇の波動が青い狼を一気に消し去っていった。 

 この技は悠夜か?いや、悠夜はまだ魔法は使えないはず。

「そんな所で腰を抜かしてたらやられるぞ」

 竜先輩、それに光喜と亜矢。

「隼人、これって一体何?私の頭が変になっちゃったの?」

 そう言って、亜矢は俺に抱きついてきた。

 普通の人はそう思うよな。

「大丈夫、亜矢は正常だ」

 そう言って頭を撫でながら慰めてやった。


「やっと隼人が参戦か。てっきり武田にやられたと思ったぜ」

 烏丸の周りにはさっきの狼が数匹群がっている。

 獣使いにでもなったのか?

「烏丸、考え直せ。亜矢を殺さなくても、他に道はあるはずだ」

「っへ、戯れ言を。隼人もこんな馬鹿なことするよりか、黙って見てたほうがよっぽどよかったのにな」

 別に俺の今してることが間違いだと思っていない。

 故にこの判断が正しかったと信じている。

「今ならまだなんとかなる。本部へ引き返してくれ」

「そこをどけ隼人。お前と喋っているヒマなどない」

 聞く耳持たずか。こりゃ一回痛い目にあってもらわねぇとダメみたいだな。

「竜先輩、光喜、後は俺一人で充分だ」

「何言ってるの?こいつめちゃくちゃ強いよ。隼人一人じゃあ無理だよ」

「そうだぜ。ここは3人で一気に・・・・」

「俺のことは大丈夫だ。それより梓ちゃんの方へ行ってあげてくれ。あっちは一騎打ちで勝てるような相手じゃないからな。

それに亜矢をここに残すのも危なすぎる」

 光喜達に梓ちゃんのことを話、助けに行ってもらうように説明した。

「梓もそう弱くはないが、隼人一人で本当に大丈夫か?」

「大丈夫ですよ。俺にはどうしても負けられない理由がありますんで」

 俺は2、3歩前に出て、デュランダルを取り出し、烏丸と対峙した。

「作戦は決まったのか?まぁ別に隼人がおろうがおるまいが、戦況には変わりないからな」

 烏丸は未だ余裕の表情で俺たちを見下してきてる。

「そうか、光喜、その子を連れてこの場から退くぞ」

「う、うん」

 光喜が泣き叫ぶ亜矢の手を引っ張り、竜先輩と共に退いてくれた。

「隼人〜嫌、私も隼人と残る」

 妙に亜矢の叫びが、胸に響き、とても息苦しかった。

 でもこれでいいんだ。これで周りを気にせず戦える。

「お前正気か?せっかくの仲間を手放すとは負けたと同じだぞ」

「やってみなくちゃわからないさ。うおぉぉぉぉ・・・・」

 俺はデュランダルを頭上に構え、突撃した。

「死ぬ気か?お前がここまで馬鹿だったとはな」

 馬鹿という単語を思い切り強調して言ったあと、右手を俺の方へ差し出した。

 すると烏丸の周りに群がっていた狼が次々と襲い掛かってきた。

「邪魔をするな!」


        【風魔法剣(ウィンダー)


 デュランダルを思い切り下に振り下げて、前方に小規模な竜巻を発生させて、狼たちを一掃した。

 単に、思いつきで武田さんの漣をマネてみただけだが、ここまでうまくいくとは予想外だ。

 まぁ、違うと言えば漣は斬撃で、俺のは風で根本的に違うが・・・

「何、魔法剣だと!でもそんな下級魔法剣で俺を倒せると思うな」

 思ってねぇよ。お前には特大の技をくらわしてやる。

「一気に勝負が終わっちまうのは癪だが、力の見せしめだ。来い、フェンリル」

 フェンリル?あの青い狼の親玉ってことか。

 普通の狼とは違うのは見た目ですぐわかる。

 頭に2本の黒いの角が生えていて、青と白と黄色の綺麗な毛並み、身体は3メートル弱ある。

 だがこんな獣一体どうしたんだ?

「驚け。俺の魔力の化身だ。隼人だと10秒ももたんぞ」

 な・・・烏丸はもう魔力の化身を召喚することができるのか。

 でもこれはラッキーだ。烏丸のフェンリルをソウルドレインで吸収して、俺ももう一段階強くなってやる。

「行けフェンリル。あいつをかみ殺してしまえ」

 烏丸がそう命令した瞬間、フェンリルは地面の中に沈んでいった。

 一瞬戸惑ったが、俺の相手はあんな狼じゃない。烏丸だ。

 消えたなら出てくるまでほっておく。

「烏丸ー」

 俺は一直線に烏丸に立ち向かっていったが、烏丸は構えることもせず、ただ突っ立っているだけだった。

 その余裕、後悔することになるぜ。


        【ソウルイーター・バースト】


 俺の身体は紫に輝きだし、一気に加速して、烏丸を殴りつけた。

「やってくれるじゃねぇか。フェンリルもうやってもいいぞ」

 烏丸がそう叫ぶと、大地が揺れ、地面が割れ始めた。

 その割れた地面から、20メートルは軽く超えている、巨大な土の塊の化け物が現れた。

 化け物の頭の上には烏丸の魔力の化身、フェンリルが乗っていた。

「こんな奴相手にできるか」

 俺の標的は烏丸のみ。

 あいつさえ倒せば、あの化身も消える。

「おっとお前の猛攻もここまでだぜ」

 体が重い。石化しているのか?

 いや、体全体が土に覆われ始めている。

「気づいたか?あの巨人は大して戦力にはならないが、俺とフェンリルの半径30メートルに入ってきた奴は、粘土に覆われ土の塊になる」

 なるほど、そういうことか。

 俺は身体についている粘土を掻き落とした。

 まぁ石化に比べれば大したことないが、厄介なことには変わりない。

 粘土になる前に烏丸を倒すにしても、そんな賭け事は危なすぎる。

 やっぱりあの巨人から倒すべきだな。


          【サーベルレイン】


 巨人に向かって剣の雨を降らせたが、その巨人には全く効かず、全て弾かれた。

 無敵かよあいつ。

「無駄だ。お前はもう死ぬしかないんだよ」

 いや、まだだ。今は勝算がなくても、作ればいいだけだ。

 なんとかあのフェンリルの能力をソウルドレインできれば、少しは勝算ができる。

 このままバースト状態だと体力の無駄使いだ。

 ここは危険だが一気にフェンリルの能力を吸収しに行くか。

 俺は巨人の頭の上で高見の見物をしているフェンリルを睨みつけた。

「よし、いくぜ」

 気合を入れ、土の巨人の身体を走りながら登った。

「血迷ったか?フェンリルは地面を伝って移動できる。しかもそんな狭い足場だとお前の方が不利だぞ」

 そんなことはどうでもいい、俺の目的はあいつをソウルドレインするだけだ。

 あと10メートル近くになると、巨人の能力が発揮しだして、俺の身体はどんどん重くなり、登りづらくなってきた。

「くそ、あとちょっとだというのに」

「がはははは、どうした?ヤモリみたいに這いつくばって?」

 やばい、重くなりすぎて、指とか足が身体を支えきれず、痺れてきた。

 やっぱり、無茶だったか。

「フェンリルそいつをこっちに、蹴り落とせ」

 烏丸がそう言い、フェンリルは俺のところへ駆け下りてきた。

 チャンス、俺はその巨人を蹴り離れ、右手を空に向かって広げ


           【ソウルドレイン】


 タイミングはバッチリだ。

 俺が技を発動したと同時に、目の前にフェンリルが蹴り落とそうとしてきた。

 だが遅い。フェンリルが俺を蹴落とす前に、ソウルドレインが発動し、フェンリルはそのまま苦しみながら落ちていった。

「ってか俺もすごい勢いで落ちる〜」

 粘土で固められた身体はすごい重量感で、かなりのスピードで落ちていった。

「痛って〜」

 地面に落ちたのと同時に身体に固められた粘土も一緒に割れた。

 むしろこの粘土のおかげで助かったとか?

 しかもさっきの巨人も何故か消えていた。

「隼人、フェンリルに何をした?」

 何をしたって、ちょっと力をもらっただけなんだけど・・・・


――眠りの淵から私を呼び起こしたのは誰だ。


  ソウルイーターの主よ、お前が私を呼び起こしたのか。


  ならば問おう。お前は私の力が必要か―――


 俺の頭の中からそういう声が響いた。

 しかも妙に胸の鼓動が早い。

 それに体中が燃えるほど熱い。

「お〜フェンリル無事だったか。もう俺は怒ったぜ」

 今の俺には烏丸の声など聞こえず、ドクンドクンと胸の鼓動だけだ大きく鳴り響いた。


―――時はまだ熟せり。


   だが私を必要とするならば、解放しろ


   さすれば私はお前の(つるぎ)となろう―――


 これはもはやフェンリルの能力なんかじゃない。

 何かが俺を呼んでる?

 いや、ソウルイーターが俺を?

 いいぜ、呼んでやろうじゃないか。

「俺の邪魔をしたこと後悔するがいい」


        【エアーストリーム】


 回転しながらすごい勢いでフェンリルは俺に突撃してきた。

 早速お前の力見せてもらおうじゃねぇか。

 俺はソウルイーターを天に掲げ、そいつの名前を呼んだ。

「来い。ノア」

 その瞬間、ソウルイーターは輝きだし、それと同時にフェンリルの泣き声が聞こえた。

「一体何が・・・・」

 ソウルイーターの輝きが収まり、俺はその正体を確かめた。

「こいつが・・・俺の魔力の化身?」




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